第118話
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綺麗に着飾った若者の服に彩られ、戦士達の亡骸は丁寧に荷台に積まれてゆく。
そしてそれを唯遠くで見つめなければならない孤影もまた悲痛な表情で死者への弔いの言葉を探すことも出来ないまま、その場で立ちすくむしかなかった。
(これは全て自分達が招いた事なのだ…)
若者は言い訳の出来ぬままでどうすべきかと考えた。
多くの人々の命を失わせた責任は重い。手首を力強く握るとベルドルは決意したように顔を上げた。
――首を刎ねるべきだ
それしか散った戦士達に顔向けできない。
そう心に決めるとベルドルは近くで生き残り跪くと騎士へと近寄った。
それから目で騎士を見て言った。
「腰の物を借りたい」
息も絶え絶えの騎士が兜上げる。上げた兜の中から見えた騎士の顔はロビーと話をしていた髭面の騎士だった。
彼もまた生者だった。
騎士がベルドルに問うた。
「腰の物…だと?この剣を借りてどうするつもりだ?貴殿…?」
ベルドルは正直に騎士に言った。
「自ら首を刎ねて、死者に対して詫びるつもりだ」
ベルドルが言った瞬間、騎士は一瞬微笑した。だが次の瞬間ベルドルは弾かれるように吹き飛ばされた。
そう、頬に赤く染まる痛みを伴って。
「何を言う!!」
吹き飛ばされたベルドルに怒声が飛ぶ。
「簡単に言うんじゃない」
騎士はベルドルを睨みつける。
「貴殿はこの戦場を戦い自らの剣で生きた。確かにこの悲劇は貴殿が持ち込んだものかもしれぬが」
大きく息を吐く騎士。そして言葉を続けようと胸を張る。
「…だが我々は自分達に責任においてその義務を果たしたのだ。我らはアイマール王国の騎士。そこに生きる人々に危難が迫れば生命を賭して全力で護るのが義務であり責務なのだ。よって貴殿が成したことは一切我らに関係ない。我らは成すべきことを成したまでのこと、ただ…」
騎士はベルドルを見る。
「もし散った戦士を貴殿が悼んでくれるのであれば…」
そこで再び微笑した。しかしそこに怒りは無い。
「長く生きられよ。そして口伝であれ我らの今日の奮闘を伝えられたし、それこそが我ら戦士としての誇りである」
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