一堂に会す
『身元引受人は、管理監督の上で家族と同等の権利を有する』
それを盾に、ティコナは決して引こうとしなかった。
けれど女性達も引くに引けず、
「屁理屈を…!」
と口にした。
だが、その瞬間、
「いい加減にしないか! 店や他の客に迷惑だろう!?」
決して大声ではないが、有無を言わさぬ気迫に満ちた一喝に、
「!?」
女性達がビクッと体を震わせて固まる。
ライラだった。ライラが厳しい眼差しで睨み付けていた。
そんな彼女に、女性達の中でリーダー格と思しき一人が、
「でも…私達は、ライラ様のために……」
と抗弁しようとした。しかしそれも、
「……」
黙って視線を送ってくるライラの前に、萎びてしまう。
完全に言葉を失いしょげ返ってしまった女性達を見て、ティコナも少し可哀想にも思えてきてしまった。
するとライラがすっと立ち上がって、
「私の従者達が大変な迷惑を掛けてしまって申し訳ない。彼女らに成り代わって深く陳謝する」
ティコナや、彼女の向こう側にいた店の給仕達に向かい、深々と頭を下げた。
そんな彼女の姿に、女性達は、
「ライラ様……っ!」
言葉を詰まらせ泣きそうな表情になる。自分達が良かれと思ってやったことが結果的にこの事態を招いてしまったことを思い知ったのだ。
「あ…いえ、騎士様にそこまでしていただくのも……」
これにはティコナも怒りを維持することができなかった。
『え…と……』
リセイに至っては、どうしていいのか分からずに呆然と立ち尽くしているだけだ。
と、ライラは少し困ったように微笑んで、
「思わぬ騒動になってしまったが、改めて食事にしないか? そこの君も一緒に」
そう切り出した。ライラの言う<君>は、ティコナの傍らにいたファミューレのことだった。
「え…あ、私は……!」
慌てて遠慮しようとしたファミューレだったものの、
「まあ、そう言わずに、どうぞ」
とまで言われてしまっては断り切れず、ライラの向かいにリセイ、リセイの隣にティコナ、ライラの隣にファミューレという形で席に着くことになった。
ライラの<従者>の女性達は、隣のテーブルにおどおどしながら着く。
そうしてようやく少し落ち着いたところで、
「いろいろと行き違いはあったようだが、とにかくせっかくの機会だ。今日はいろいろと語り合おうじゃないか」
ライラがその場を仕切り、<食事会>ということになった。
しかも、
「皆にも迷惑を掛けた。この場の払いはすべて私が持つ。それでかんべんしてほしい」
呆気に取られて騒ぎを見ていた他の客達に向けてそう言うと、
「!? ありがとうございます」
「ありがとうございます。ご馳走になります! ライラ様!」
あちこちから声が上がったのだった。
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