今後の対応

ライラの話は続く。


「魔王ドーレーアについても、『千本の手足を持ち小山のように巨大な体をよじるように蠢く黒い塊』としか分かっていないそうだ。


これを押し返すのは勇者にしかできないと言われてて、しかも完全には倒せないとも言われてる。


あくまで消耗させて力を奪い、<魔王の世界>に追い返すだけらしい。だから、時間が経つと力を取り戻して動き始めるんだ。


そして、魔王が動き始めると、獣を魔獣に変える<魔素>が増え、これが魔王の尖兵として現れる。


が、魔素は場所によって元々濃いところがあってな。そういうところでは魔獣も頻繁に現れるんだが、わざわざそんなところに街を作ったりもしないから、『生涯、魔獣を一度も見たこともない』って人も多いんだ」


そこで話を区切ったライラに、


「そうだったんですね」


リセイが相槌を打つ。


その説明のおかげで、これまで以上にしっかりと魔王や魔獣に対してのイメージが持てた気がした。


そして、


「僕の方こそ、お願いします。一緒に戦わせてください……!」


と素直に言えた。


そんな彼の姿がまた頼もしく思えて、


「お…おう! もちろんだ! そのためにもシゴくぞ! 覚悟しておけよ」


ライラは頬を染めながら言った。


で、そんなライラとリセイの様子を、やや下がった位置で馬に乗りながら窺っていたレイが、


『いい雰囲気じゃねーか。結構結構…!』


と笑みを浮かべていたりもした。




こうして街へと戻ってきた第二隊は、ルブセンに詳細を報告。アムギフに続いて魔獣を撃破したと言ってもさすがにそうお祝いばかりもしていられないので、今回の件については、


「現場を改めて確認の上、別途、賞与を出そう。ただ、新しい魔獣については今後の対応が決まるまでは他言無用とする」


と、ライラとレイに告げられた。


「ま、当然だな」


ルブセンの執務室を出て第二隊の控室に戻る途中で、レイが口にした。


ライラも、


「そうだな。兵士達には申し訳ないが。アムギフ撃破でお祭り騒ぎをしてまたすぐにというのもいささか緊張感に欠けるからな」


そう応える。


そして控室に戻ったところで、


「今回の功に対して賞与が出るとルブセン様がおっしゃってくださった!」


ライラが告げると、


「おおーっ!」


歓声が上がる。が、続けて、


「ただし、今後、魔獣が続けて現れる可能性があることと、魔王の侵攻も予測されることから、対応策が決まるまでは、今回の件については他言無用に願う。


まあいつもの如く喋ったところで罰せられはしないだろうが、無用な不安を与えるのも望むところではないからな」


彼女の指示には、皆、


「はい!」


と気を引き締めたのだった。


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