G03-06
「あれ。俺、なにしてだっけ」
頭がボーっとしていて考えがまとまらない。本庄卓也(ほんじょうたくや)は目の前の指揮車を見て『カイラギ』を倒さなければとと思った。頭は気だるいのに体だけがみようにかるい。目の前に3体の『カイラギ』が立ちふさがっていた。
「邪魔だなー。こいつら」
3体の『カイラギ』が順番に襲いかかってくるが、その動きがまるでスローモーションのように遅い。彼は両手に持った二本の剣で、攻撃をかわしながら次々と『カイラギ』の首をはねていく。
「弱いなー。こいつら」
「そうだ。帰らなくちゃ。母ちゃんが夕ご飯を作ってるんだっけ」
彼は目の前に転がっている『ウェアーバイク』に足を入れて走り出す。高速道路を北に向かって走った。途中で数体の『カイラギ』が襲ってきた。
「もう。邪魔すんなよ。母ちゃんのコロッケ、さめちゃうじゃん」
彼は『ウェアーバイク』に乗ったまま、追ってくる『カイラギ』をやすやすと倒していく。新国道Bに入って新八王子市市街を目指す。見慣れた景色が見えはじめた。サイレンの音がけたたましく鳴り響ひている。
「うるさいなー。『カイラギ』なら俺が倒したって」
本庄卓也(ほんじょうたくや)は見慣れた商店街の小路をまがって、自宅のある商店街のアーケードに入った。目の前を小さな『カイラギ』たちが右往左往している。
「なんだこいつら。邪魔なんだよ」
彼は剣を振るってそれらを切り飛ばして回った。アーケードの入り口に目をやると4体の『カイラギ』が『ウェアーバイク』に乗って近づいてくる。相変わらず頭が重い。
「ほんとしつこいな」
1体の『カイラギ』が『ウェアーバイク』をぶつけてくる。『ウェアーバイク』が彼の目の前で爆発し、体が炎に包まれた。
「なんだ。体が動かない」
3体の『カイラギ』が『ウェアーバイク』に乗りながら腕からアンカーを射出して、ワイヤーを彼の体に巻きつけている。
「俺、死んじゃうんだ」
感情のまったくない言葉で本庄卓也はつぶやいた。
「死ぬ。ん。あれ。メグ」
本庄卓也の脳裏に最後の戦いの記憶がよみがえってくる。
「メグ。メグはどこだ」
視界が鮮明になっていく。商店の軒先には街の人々の死体が転がっている。
『バイオメタルドール』BMD-L03が日本刀を振りかざして襲いかかってくる。
「八木(やぎ)先輩」
本庄卓也は大声で叫んだつもりだったが、声が届かない。
「やらせない」
山下愛(やましためぐ)の声が頭の中に響いてきた。背中にもう一つの意識が目覚めたのを感じたその時、剣を握る別の腕が出てきてBMD-L03の日本刀を受けた。
「メグなのか」
「卓也。私たち『カイラギ』になっちゃったみたいだよ」
目の前に『バイオメタルドール』が2機、日本刀をかまえている。1体は八木啓介(やぎけいすけ)先輩のBMD-L03、もう1体は近藤元気(こんどうげんき)先輩のBMD-L04。背後にも『バイオメタルドール』の気配を感じる。背中から山下愛の視覚と意識が流れ込んでくる。
「栞(しおり)、未来(みらい)さん」
飯野栞(いいのしおり)のBMD-G06と佐々木未来(ささきみらい)のBMD-G04が日本刀をかまえて立っていた。
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