5-153 対戦
「サヤちゃん!!!そのヴァスティーユの正体は、オスロガルムよ!!!」
「ちっ!?判ってたんだよ、そんなことは!?せっかくこいつを油断させようとしたのにさぁ!!……ったくアンタは!!」
そういうと、サヤは後ろに跳躍しヴァスティーユと距離を置いた。
モイスはその横に降り立ち、サヤにその言葉の真意を問う。
『サヤよ……それはどういうことだ?』
「どうもこうもないんだよ、このタコっ!」
そう悪態をついてから、サヤはモイスの質問に答える。
ハルナとフウカが繋がっているように、サヤもあの二人とは意識の繋がりがあった。
閉ざすこともできたのだが、二人はそれをサヤにお願いしていた。
二人はそこに、――生前には感じられなかった――家族としての絆を感じていた。
あの爆発の際、繋がりが消えた……存在が消滅した時の感覚とは異なり、何かに乗っ取られたような感じがした。
その瞬間、サヤは急いでその繋がりを断ち、こちらの情報を探られないようにした。
サヤたちは前もってそうなることを決めていた、乗っ取られた場合にはその繋がりを断つということを。
二人も、自らがサヤの邪魔にならないように、そうなることを望んだ。
「だから、アタシはあいつらの望み通りに繋がりを断ったんだ」
「それでわかったてたのね……ヴァスティーユが操られていたこと」
サヤのその言葉は平常を装っていたが、その深いところにそうさせたことによる不快感を抱いていることがハルナには感じられた。
だが、今はそんな時ではなかった。
『ククククッ……これでようやく、そろったな。お前たちが消えれば、この世界は元のままだ!悪いがお前たちには消えてもらうぞ!!』
『――そうはさせんぞ!!』
モイスが、ヴァスティーユとヴェスティーユにめがけて氷のブレスを吐き出した。
その結果は以前と変わることがなく、ヴァスティーユとヴェスティーユを避けて通過していく。
これこそが、この二人の中にオスロガルムという存在が支配しているという証になる。
『バカめ!そんなもの、今更通用せんわ!!』
だがモイスは、それでもブレスを吐き続けた。
これは攻撃をするためではなく、時間稼ぎの意味があった。
まずはブレスによって視界を塞ぎ、次にその周りに氷の壁を創り出してオスロガルムをその中に閉じ込めた。
これならば直接攻撃ができなくても、オスロガルムの行動を制限させられることができる。
これもハルナとの訓練の中で、ハルナから提案されたことだった。
「サヤちゃん、どうするつもりなの?」
「まぁ、こんな状況になったのもあんたのせいだよ。あんたが来なけりゃ、もう少しスムーズに決着がついたんだ」
「ご……ごめん」
「……謝ったところで何も変わらないさ。あんたも戦えるんでしょ?ヴェスティーユは任せた、アタシはオスロガルムをやる。いいね?」
「わ、わかった」
そして、モイスのブレスは徐々に薄れ、その先には氷の厚い壁ができていた。
その向こうには、中に閉じ込められたヴァスティーユとヴェスティーユの姿がある。
ハルナは、その中の任されたヴェスティーユを警戒した。
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