5-143 ヴェスティーユの役目
サヤの目的を聞いたヴェスティーユは、目を閉じて黙ったままだった。
最初は驚いたが、今はもう落ち着いている。
母親であるサヤが、”ある”ことを約束してくれたから……
「ヴェスティーユ、わかったかい?これであいつを殺さなければならない理由がさ……」
「はい……お母様」
「よし、いい子だねぇ。あんたとの約束……あんたの望みを叶えるためにも、しっかりと働くんだよ!」
そう言ってサヤは、オスロガルムかハルナを探し出す命令を再びヴェスティーユに与えた。
その命令を承諾し、ヴェスティーユはまだ完全につながっていない腕のまま外の世界へ出ていった。
「さて……と」
ヴェスティーユは、重ねた掌の上に小さな悪魔を数体産み出した。
前回のような大きな悪魔出ないのは、それだけの力がまだ回復していないことと、大きすぎるとまたオスロガルムに自分の位置を探知されやすくなると判断したためだった。
「よし……行け!!」
ヴェスティーユの命令により、小さな悪魔は一斉に空へと飛び立っていった。
サヤが言うには、オスロガルムはあの爆発の中でも生きている可能性が高いといった。
出なければ、すでにこの世界に大きな変化が起きているらしい。
最初はサヤの言葉を疑っていたが、サヤの話を聞く中でその推測が間違っていないと知った。
飛び立った下僕たちの情報が、ヴェスティーユの中に流れ込んできた。
全ての下僕たちの情報が正常に入ってきていることを確認すると、ヴァスティーユはこの場を離れるために歩き始めた。
(さて、どこから探し始めたもんかな……)
その時、頭の中にある映像が送られてきた。
「こ、これは……すごいねぇ!?」
そこはオスロガルムがいて、あの崖があった場所だった。
文字通りそこには何もなくなっており、ただ石でできた広場が広がっているだけだった。
この状況を見て、本当にオスロガルムが生き残っているということが信じられなかった。
生き残っていたとしても、これほどの爆発の中心にいたとなれば、決して無事では済まないだろう。
そんなに遠くに逃げることもできず……案外楽にサヤの希望、自分の願いが叶うのではないかとヴェスティーユは判断した。
(もしかして……お姉ちゃんも……)
そんな淡い希望を抱きながら、ヴェスティーユはその場所まで足を進めていき、その速度は上がっていく。
目的の場世に到着すると、ヴェスティーユはこの状況に言葉を失った。
これほどの変化をもたらした、オスロガルムのあの力に自分たちが敵うのかという疑問が生まれた。
弱気になりかけたその思いを、ヴェスティーユは素早く頭を振ってその考えを消そうとした。
「ぶるるるる!……ダメだよ、弱気になったちゃ。お母様に願いをかなえてもらうんだ、絶対に!」
そう言ってヴェスティーユは、自分の頬を数回両手で叩いて気合を入れた。
進んでいくと、広い石の広場の上に立った。
足元を見ると、複数の線が中心に向かっていくのを見てヴェスティーユもそこに向かっていく。
そして、全ての線が集まる場所までたどり着いた。
「ここが……中心」
ヴェスティーユは片膝を地面につけ、その中心の場所を掌で撫でた。
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