5-117 今までのこと、これからのこと









ラファエルは、オスロガルムに自身がサヤの中に見たその時の状況を話して聞かせた。

オスロガルムはそこで初めて、自分が討たれることによってこの世界が崩壊することを知った。


そのことを聞いたオスロガルムは、一言も発せず静かに目を閉じていた。

ステイビルたちも、その張り詰めた空気の中で一言も言葉を発することができず、ただこの状況を見守っていた。




ラファエル自身も、オスロガルムが自分の身に起こることを知った際に暴走するのではないかという時のために身構えていた。

だが、最終的にはそんな大きな問題も起こることはなかった。


オスロガルムはゆっくりと閉じていた目を開き、再びラファエルを視界に留めた。

今までのことやこれから起こりえる様々な状況を考察しながら、多様の思いが胸の中に泡のように浮かんでくる中、オスロガルムは一番初めに確認しなければならないことを聞いた。




『これは……本当に起こりうることなのか?』



『あなたもあの子の中にあったものを見たというのなら知っていると思うけど……今までの出来事の中で、何一つとして外れたことはなかったのではないかしら?』





ラファエルからの答えが、自分のことを弱らせたいのか、ただ真実を告げたのかはわからない。

しかし、どちらにしても変わることのない同じ結論にたどり着き、質問に対する答えを口にした。





『そうか……』





そうつぶやいたオスロガルムから、今までのような勢いは感じられなくなっていた。

何を思っているのかはわからなくはなかったが、ステイビルたちも魔神に対して掛ける言葉が見当たらなかった。

あれほどの大虐殺を繰り広げたものだとしても、自分の将来が死であり、守ろうとしていた世界が崩壊する運命が避けられないと知ったその心中は理解できなくもなかった。



しばらくの無言の時間が過ぎた後、オスロガルムは状況を理解し、まずステイビルに話しかけた。





『……わかった。お前たちの協力の話も無しだ』



『それで……あなたは一体これからどうするのですか?』



『さて……どうするかな?とにかくワシはサヤを探してみるとしよう……お前たちも世界の終わりの時までの残り時間を精一杯もがけよ』



「……魔神オスロガルム」





ステイビルたちに背を向け、この場から離れる行動を取ろうとしたオスロガルムをステイビルは呼び止めた。





「我々も何とかこの世界を救う方法を探っている。もし……もしも、この世界を無事に救うことができたのなら話を聞かせて欲しい」



『話し……だと?お前たちが、このワシと一体何を話したいというのだ?』



「今までのことからも、何かの思いがあっての行動だと感じた。その辺りを話し合えば、我らは共存していけることが可能ではないか?」



『甘い……甘いぞ、人間よ。だが、その話悪くはない……ワシとて、お前たちを傷つけることが楽しいわけではない……いいだろう、もしも無事に世界の崩壊を止めることができたのならば、その時は対話に応じよう』



「その判断に、感謝する……オスロガルムよ」







そのステイビルの言葉に、オスロガルムの表情を変えることなく振り向き、他の悪魔と一緒に空に飛び立っていった。










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