5-96 新たな人員
「エレン!そっちへ行ったぞ!」
「任せて……えい!」
エレーナはアルベルトの刃から逃れた悪魔に対し、複数の鋭利な氷の礫で迎え撃つ。
悪魔の身体には複数の穴が開き、そこから瘴気を漏らしながらその場に倒れ込んだ。
「……ふぅ。なんか襲ってくる魔物も、徐々に強くなってきてない?」
「エレーナさん、危ない!」
エレーナが倒したと思っていた悪魔の傍に近寄ると、尖った爪をエレーナの脇腹に向けて突き刺そうとした。
だが、その爪は届く手前で上空から落ちてきた大きな石のブロックに阻まれてしまった。
「あ……ありがとう、オリーブ」
「気を抜くんじゃないぞ、エレーナ」
ステイビルは焦らせないようにと落ち着いた声で、エレーナの無事を喜んだ。
「ですが、オリーブ様の連携も随分と様になってきたようですね」
「あ、ありがとうございます。ソフィーネ様、ですが、私なんて……まだ足を引っ張ってばかりで……ハルナさんの代わりなんて」
「まだ言ってる……あなたはハルナじゃないし、ハルナになって欲しいとも思わないの。あなたはあなたのままでいいのよ、オリーブ!」
「はい……エレーナ……さん。頑張ります……」
「……よし!今日はこの辺りで戻るとしよう」
「「はい!」」
「それにしても、魔物が増えてきましたね」
「そうだな、これも世界が終わることと何か関係があるのかもしれんな」
「やっぱり……本当なんですね……そのお話」
ハルナと別れてから、約一年が経過しようとしていた。
ステイビルとキャスメルも再び分かれてそれぞれが神々の加護を受ける旅を続けている。
ステイビルたちは、ハルナが抜けた人員を追加することが許された。
その人員に抜擢されたのがオリーブだった。
オリーブは王宮精霊使いを目指し、ラヴィーネで様々な任務を精力的にこなしていた。
他の者より年齢が高い状況で精霊使いとなったため、その遅れを取り戻すために必死になって頑張っていた。
その裏には同期のハルナやソルベティの活躍の話が聞こえており、自分の今の地位に焦りを少なからず感じていた。
そこでオリーブは、一つの目標としてハルナやエレーナが王選に選ばれる際に獲得した”王宮精霊使い”の資格を目指すことにした。
通常、王宮精霊使いの試験を受けるためには各町の大臣の推薦が必要となり、その際に精霊使いとして町にどの程度貢献したかの実績が必要となる。
オリーブはそのために、必死になって働いてきた。
その行動は、エレーナの母であるアーテリアにも報告が挙がってきた。
そしてハルナが別行動となる際に、各町に追加で王選に参加できるクラスの精霊使いを極秘で募集をかけたところ、ラヴィーネからはこのオリーブが推薦された。
オリーブは西の国の王選の際にも帯同していたため、その実力はキャスメルたちも判っていた。
そうして、オリーブはステイビルたちと一緒に旅をすることになった。
オリーブはステイビルの組に呼ばれた時、今までの話の説明を受けた。
それによって、いままでハルナやエレーナたちがどれだけ厳しい旅をしてきたのかを聞いて、オリーブはその役目が務まるか度々不安に苛まれていた。
だが、逃げ出すこともできるはずもなく、ハルナが別れて行動している理由を知っているため、自分が弱音を吐くことは許されないと常に自分を奮い立たせ続けてきた。
そして、ステイビルたちはこの周辺を探索するための拠点となる集落に戻ってきた。
そこにはある男がまた、出迎えてくれていた。
「おかえりなさいませ、ステイビル王子」
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