5-73 摂理









『何が起きている!?……水の竜よ、これは……これは、お前の仕業かぁ!?』



『そうだと言いたいところ……だがな、これはワシの力ではない。それよりももっと……自然の摂理に近いような力であろうな』



『何をいっておる?……自然?……摂理だと?ワシらは、この世において最も力を持つ存在……ワシらの上に他の存在などいるはずはない。お主たちも……そうであろう!?』





オスロガルムは、モイスの言葉を受け止められないかのように言葉を発した。





『魔神オスロガルムよ……お前は、ワシらがどのようにしてこの世界に降臨したか……考えたことはあるか?』



『お前は何を?……ワシらは誰よりも長きにわたりこの世界を見てきた。ワシにとっては魔素、お前たちにとっては元素。それらがいつからこの世界にあるのか、お前の言うことはそういう疑いを持っているのだぞ?わしらはその中でこの世界を統べるためにこの世界に誕生したのだろうよ』





オスロガルムたちの神々がこの世界に降り立った時、まだ多く生物が存在していない状況だった。

しかし魔素や元素は充分に満たされており、自らがこの世界に降臨したのは、高濃度の元素などから生じた突然変異であると、神々は自らの存在をこのように認識していた。





『しかし、だな……お主の言うことは、わからんでもない。ワシも昔はその説が有力だと考えておったわ。元素の中から我らが誕生したという説をな……だがしかしだ、ならば我ら以外の存在がなぜ同じように降臨してこない?お主もワシも随分と長い間存在してきた、だがその間一度も我ら以外の存在を見たことがあるか?』



『……』



『そこで……だ。ワシは、こういう風に思うようになったのだ。我々は誰かに”意図的”に存在させられているのではないかとな』



『……』



『しかし、これもワシの仮説にすぎん。だが、我らがお互いを傷つけあうことは出来ないようだが、それも何らかの意図ではないか……そう思ってな。そして、我らは互いに攻撃を受けぬようになっているのではないかと考えてみたのだ。その意図的に創り出された存在によって……』



『なら……ならばなぜ!お主やあの火の竜は、ワシの召喚した悪魔に対して攻撃できる?お前の考え自体が誤っているのではないのか?』



『それは、こう考えておる……ワシらを』






その先を告げようとした瞬間、オスロガルムとモイスの間に石が投げ込まれた。

二人の間でちょうど放物線の頂点に達し下降の軌道に入っていき、それが石と認識した瞬間モイスの姿はオスロガルムの前から消える。







『むっ……!?まさか……サヤか!?』





そのことに気付いた時には、石は既に地表近くまで落下していた。

石を拾い、ヴァスティーユはこの場から離れた。






『むっ!?……あいつは!!サヤの傍にいるやつだな!?』







オスロガルムは上空から、ヴァスティーユの行先を見守るが追いかけはしなかった。




サヤに持ち掛けられた剣のこと、シュナイドとモイスとの戦いのこと、そして先ほどのモイスの話しのこと。

オスロガルムは一度、自らの居住地に戻りこれらのことを考えることにした。








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