5-37 シュナイドの願い
「それで、その火の大竜神様は……いまどちらに?」
「あ、はい。こちらに」
「「――え!?」」
それが何も特別だとということなく、ただ普通に姿を見せたことに対してと、話に聞いていた凶暴さはそこから感じることはできないイメージのギャップにハルナとエレーナから声が漏れた。
「だ……大丈夫なの?サナ……乗っ取られたりしてる……とか!?」
「違いますよ、エレーナさん!」
自分のことを心配してくれているエレーナにお礼を言って、問題がないことを伝えた。
「シュナイドさん、私たちを手助けしてくれることになったんですよ!」
「「は?……はぁぁぁ!?」」
エレーナとステイビルは同じタイミングで、変な声を上げた。
その反応を不憫に思いながら、ブンデルはそのような状況に至った経緯を説明した。
サナは、モイスから受けたシュナイドの傷を塞ぐことに成功した。
それによって流れ出ていた、シュナイドを構成している元素の流出が止まった。
その元素こそが、この一帯に流れ出ていたとガブリエルが説明してくれた。
そこでようやくステイビルたちは、ここまでの道を拒んできたガスの存在が薄れている理由を知った。
この問題がひと段落したところで、サナは加護について二つの大きな存在にお願いをする。
できれば、この上で待っているステイビルたちにお願いできないかと。
”もちろん!”と最初に良い返事をくれたのは、ガブリエルだった。
そしてシュナイドは、そのお願いに対してすぐには言葉を返さなかった。
まさかここまで来て加護を得られないのは、何か別な理由があるのではないかとサナは考えた。
だが、これ以上サナがシュナイドにしてあげられることといえば、この身を差し出すことしかない。
しかし、先ほどの使った交渉材料が再び通用するかどうかがわからない。
それに、これ以上自分の身を危険にさらしてしまうのは、心配してくれているブンデルに対して申し訳がない。
だからこそ、今度は慎重にシュナイドとの交渉に挑まなければならないと感じている。
「……シュナイド様。シュナイド様から加護を授かることは難しいでしょうか?ですが、もう私には差し出せるものがございません。もうこの身もこれからは王子や旅をしている皆さんのために……」
サナが必死に説得のようなお願いをする中、その言葉を止めたのはシュナイドだった。
『う……む。そうではない……そうではないのだが……』
「であれば、何が足りないものがございましたでしょうか?望まれるものがありましたら……その……できるかぎりのことは」
シュナイドはそのサナの言葉を聞き、項垂れていた顔が上に持ち上がる。
その動作に、ブンデルは何か失礼なことをしてしまったのではないかと、サナを助ける行動がとれるように身構えた。
『ぬうッ……エルフよ。そんなに身構えることはない。もうお前たちに”何か”をするということはない。それよりも、だ……サナよ』
「――は、はい!?」
サナは初めてシュナイドから種族名ではなく、名前で呼ばれたことに驚いた。
そして、姿勢を正したまま次の言葉を待った。
『ワシの加護を受けたい……か。まぁ、それは構わんが……その……なんだ……条件……そ、そうだ!条件がある!!』
「条件……で、ございます……か?」
ある程度であればその条件を飲むしかないと考えてはいるが、余程のことであればその条件を持ち帰ってステイビルたちに相談をさせてもらおうとサナは考えた。
『そうだ……条件だ。ワシはお前たちに、加護を与えよう。その代わり……』
「その代わり……に?」
『ワシに”お前”の手伝いをさせてくれぬか!?』
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