5-9 反省






その日の夜……

ポッドからこの町の訪問の歓迎を受け、少しだけ豪華な食事を提供された。

キャスメルたちは、感謝をしてその好意を受けることにした。


そして、宴は終わりキャスメルたちは再び、借りている宿に戻ってきた。



オーサは、キャスメルたちに伝えることがあると集まってもらいたいと告げる。

シュクルスは今日は遅いし、アルコールも入っているため明日でもいいのではと告げる。

だが、ルーシーはオーサの真剣な眼差しが気になり、キャスメルに集まるように進言した。


キャスメル自身もシュクルスと同じで、明日でいいのではと思っていたが、ルーシーの言葉を受けてそのまま部屋に集まってもらうように言った。






オーサの話を聞いたキャスメルは、そのことに対して何も言葉が出てこない。

それは偶然の奇跡によるものと、先ほどまでの自分の考えの甘さを痛感していたからだった。





偶然の奇跡とは、この町に立ち寄った理由だった。。




キャスメルたちはグラキース山にモイスがいることを知らない。

ステイビルたちはマーホンのかかわりのある町、”モレドーネ”に寄ることでグラキース山のヒントを得ていた。



王選ではお互いの情報をやり取りすることは禁止されている。

これはキャスメルとステイビルたちだけではなく、王選に関わる者たちが当事者たちに精霊や竜神の所在の場所などの情報は伝えてはいけなかった。

そのため、過去の王選経験者のハイレインやエレーナのの母、アーテリアも自分の子供にもそのことを一切告げていなかった。

告げてしまうと今回の王選は中止となり、告げた者は厳重に罰せられ、今の地位などは全て没収される。

それは王や王妃であっても同様だった。


それだけ自力で東の王国で祀っている神々の許しを得なければならないということだった。

過去には、すべての神々の加護を得るために十数年かかった者もいた。

王選の対象が一組の時代もあった。


だが、その自力で加護を得るということに関しては、一度も破られたことはなかった。







キャスメルたちがこの町に寄ったのは、新しい町が出来上がったという噂を聞いたためにやってきた。

そんな新しい町に、”古くからおこなわれている、王選に関する情報などないのでは?”とアリルビートは言った。

だが、どこに何の情報が落ちているかもわからないと、キャスメルはすれ違う商人から聞いた話をもとにこの町にやってきた。

正直なところ、次の目的地に関する情報がないためこの旅も行き詰っていた。


そのため、キャスメルは軽い気持ちでこの町を訪れていた。

そこに次の神の情報があるとは期待していなかった。



そして、もうひとつ……

自分の馬鹿さ加減に対して、ひどく落ち込んだ。


確かに期待はしていなかったが、そのことが頭から抜け落ちていたのも事実だった。

アリルビートが言った、”新しい町には古いしきたりの情報はない”ということを、真に受けてしまっていた。


可能性については全てにおいて、考慮する必要がある。

面倒な作業でも、そのことを一つ一つ時間と頭を使っていかなければ、すべての神にたどり着くことなどできないと痛感した。



その中で、期待をしていなかったコボルトからその情報を持ち掛けられたことも、キャスメル……だけでなく他の者もショックを受けていた。

コボルトは会話もできて意思の疎通はできるが、知能はそこまで高くはないと”決めつけていた”。

実際に、状況の判断や先を読む力は、オーサよりもシュクルスの方が上だろう。


だが、今回はオーサの行動によって、隠されていた道の一つを見つけることができたのだ。

短くはない旅の仲間を、どこかで見下していたことを恥ずかしく思っていた。




「す……すまない……オーサ」



キャスメルは素直にオーサに詫びる。



「ん?……何がだ?」



オーサは、自分が何に対して謝られたのかはわからなかった。

それよりも、自分が聞いてきてくれた話をすぐに対応してくれたことの方が、オーサにとっては嬉しかった。

そのことを後で聞いた時、いろいろと行動や思考には注意しなければならないとキャスメルたちは心に深く刻んだ。








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