4-91 砂漠の施設5
「さて、少しお話しを聞かせてもらってもいいかしら?」
ソフィーネは首元から短剣の刃を外し、男の前に立ち短剣がまだ狙っていることを示す。
男は薄暗い闇の中、布で巻かれて目だけしか出ていない女性の顔に怯えながら、無言で数回頷き言うことを聞く姿勢を表した。
「あと、大声を出したりしないことね……でないと痛い目をみるわ」
――パン!
倒れ込だ膝先に、何かが破裂した様な音がした。
床に目線をやると、何かがぶつかったような跡があり床がえぐれている。
この床は結構硬い木でできており、これがこの部屋の中から放たれた”何か”によってえぐられる程の威力を持つもので狙われている。
ここは、この女の言うことを聞かなければならないと男は判断した。
ハルナは、あのタイミングで精霊の力で脅しをかけた。
完全にハルナのアドリブだったが、のちにその行動をソフィーネに感謝された。
男の知らない未知なるものに狙われているという男に与えた恐怖が、その後の尋問の際に優位に働いたという。
その効果があったのか、男はソフィーネの質問に素直に答えてくれた。
この騒動は、警備兵側から仕掛けられたとのことだった。
なんの前触れもなく襲い掛かり、手当たり次第に攻撃をしてきたという。
人数としては、警備兵が二十近くで、それに応戦しているのが十数名ということだった。
この場所にはソイランドから詰めている警備兵とソイランドの廃墟に住まう者とガラヌコアの町から来ている者たちがこの建物の中に入れ替わり常駐しているという。
あの爆発は、薬物を保管している部屋の一つで争いがあり、巻きあがった粉に引火し爆発したという。
その部屋にいた者は大きなダメージを受けているとのことだった。
ソフィーネは、なぜ警備兵が武力行使に出たのかが気になり、そのことを男に問いかける。
その答えは、閉じ込めている女……メリルのことではないかと推測した。
推測というのは、この建物の中で二つの組織がぶつかり合っている。
警備兵の者たちは、その女の扱いを丁寧に行うように言われていたが、警備兵に所属していない者たちはそんな命令は知ったことではなかった。
その女に手を出しかけた時、その者は酷い怪我を負わされたと聞いてる。
通常の”業務”の範囲内であれば、お互いが衝突する問題があるとすればあの女しかいないという。
「それで、その女の人はいまどこにいるか知ってるの?」
「いや、わかんねーな。警備兵たちに取られないように連れ出すようには指令が出ていたが、その後はどうなってるか知らねーんだ」
だからこそ今、この男はこの場所にいるのだろう。
仲間が戦っているはずだが、自分の命を大事にして逃げ出してきたのだから。
ソフィーネもハルナもそのことは気にkしてはいない。
二人もステイビルから、”危険を感じたら真っ先に自分の命を優先するように”と厳しく言われている。
作戦の失敗は命にもかかわるが、その前に危険を回避し逃げ出すことが出来れば、一つしかない大切な命は失われることはない。
その見極めの一瞬のタイミングを誤らなければ、どうにかなることも多い。
生き残っていればこそ……だ。
この男もそのタイミングを逃さずに不利と感じた状況を離れ、命を大切にしたことは立派なことなのだ。
「そう……これ以上は、実際に状況を見て判断するしかないわね」
「な……なら、もういいだろ?この紐を解いてくれ!なんなら、手助けしてやっても……い、いや!?手伝ってくれ、あんた強そうだし、警備兵以上のつよさがあるんだろ?なぁ……報酬も出るはずだ!!どうだ!?手を貸しちゃくれねぇか!?」
「わかったわ……アンタには案内をお願いしようかしら?」
そう言ってソフィーネは、男を布で縛っていた手首を解く。
ハルナは男が逃げ出すんじゃないかと心配していたが、男はソフィーネの戦力を仲間のところへ届けることで逃げ出したこともうやむやにできると判断していた。
「そ、それじゃこっちだ!」
男はドアを開けて、いま逃げてきた廊下を戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます