2-102 作戦開始






エルメトは、王宮の中に入りニーナの元へ足を運んだ。



そして、ニーナの身の回りの世話をする、本日の従者に取次ぎをお願いし許可を得た。





「エルメトさん、本日はどうされました?」





ニーナが昨日から王選が始まり、緊張が取れない状態のところにエルメトの訪問を喜んだ。





「今日はお話しがあってまいりました……」





エルメトはちらっと従者の方をみると、ニーナもその視線を察し従者に部屋から出るようにお願いした。





「この時期、誰が聞いていて敵かもわかりませんから」




そう言ってエルメトは、ニーナの対応に感謝をした。


ニーナはにっこりと笑い、その言葉に返した。






「それで、今日はどのようなお話しなのですか?」



「実は、昨夜ボーキン様の住宅が魔物による襲撃を受けました。その前に、玉座の間で行われていた控室でちょっとした問題もあったのです」



「問題……ですか?」





ニーナは不安そうな顔をして、エルメトに聞き直した。





「はい。あの時、控室で……」






そう言いて、エルメトはアーリスとシュクルスがフェルノールと接触した際の内容を伝えた。

続けて、その夜に起きた出来事も伝えた。




ゴーフからの情報を考慮し、ハルナがある計画をみんなに伝えた。

その計画に対して、誰からも反対意見がなかったため実行に移すことになった。





「……ハルナさんの案ですか?いい考えですね!何も手立てがありませんでしたから、これできっかけが作れるかもしれませんね」





そういって、ニーナもこの計画に賛同した。





「では、この二人を護衛に付けておきます。……アーリスもシュクルス殿も、ニーナ様をよろしく頼みます」



「「わかりました、任せてください!」」








まず王宮内の警備は、専属の警備兵が担当することになっている。

今回は、王選の派閥でニーナの信頼がおける警備兵として王選期間中は特別に警護にあたる命令を発行してもらわなければならない。



アーリスはもともと警備兵であるため比較的簡単な申請で、王宮内の警備をすることを許された。

しかし、シュクルスは西の国では見習いとして入っているた、アーリスほどの信用はなかった。

そこで今回は、王宮警備兵ではないがニーナ派の代表警備兵であるボーキンと王宮警備兵内の一隊長であるゴーフの推薦状を持って、王宮内警備の警備兵として承認してもらうよう申請した。


普段なら一兵卒のアーリスが申請しても、たらい回しや処理を後回しにされたりと、嫌がらせを受けることも多々ある。

今回はニーナも同行して申請したため今までに見たことのない程、速やかに処理が行われ申請が受諾された。






「これで、二人とも堂々と王宮内を歩き回れるわ!」



「ニーナ様のおかげでございます。恥ずかしながら、警備兵の申請でこれほどスムーズに承認が行われたのは、生まれて初めてです……」



「そうなんですか!?警備隊の運営も少し見直した方が良さそうですね……」



「とにかく、今は次の作戦を進めましょう」




三人はまたニーナの部屋に一旦戻っていった。



そして、一時間ほどが経過した。





「そろそろ、行ってみませんか?」



シュクルス席を立ち、アーリスに声を掛ける。

その言葉にアーリスも席を立ち、二人は装備を整え準備をする。



「それじゃ、二人とも気を付けてね」



シュクルスはニーナに向かって、笑顔で頷き安心させる。





二人は、城内の探索を開始した。


やはり、見たことのない二人のため良く声を掛けて止められた。





「おい!ここは勝手に歩き回っていい場所ではないぞ!」



「許可は頂いております、ニーナ様の護衛として王選の期間警備することになりました」



アーリスとシュクルスは、先ほどもらったばかりの許可証警備兵に見せた。




「う……む、本物だな。しかし、お前たちがニーナ様を守れるのか?警備兵ごっこもほどほどにしておけよ」




そう言って、さも何もなかったかのように警備兵は、自分の本来の仕事に戻っていった。






城内を回ると同様のうやり取りが数回あったが、最終的には許可証によって信頼された。




二人は、一度ニーナの部屋に戻ることにした。

帰りのルートも、行きと同じ順序で帰ることにした。同じ通路をたどり、城内の道を忘れないために同じ道で慣れるようにと。






「おい、こんな狭いところで迷子か?気を付けて帰れよ」



「……フン」





戻る途中、同じ警備兵とすれ違ったが、今度はからかわれたりはしたが引き留められたりはしなかった。




そしてその途中で、曲がり角からその人物は現れてた。




「あら、またあなたたちなの?」



「こんにちは、フェルノールさん。只今、城内を警備中なのです」



「先程、そのこ警備兵から聞いたのだけれど、あなたたちが特別に王宮警備兵に派遣されたのは本当なのね。見習いから、凄い出世じゃないの」



フェルノールからシュクルスへの言葉は、出世への賞賛ではなく嫌味というのは誰にでもわかることだった。


そして、フェルノールはシュクルスの姿を見て昨日と違う点に気付いた。




「あなたには似合わないあの剣、今日はどうしたの?」




「特別な力を持つ大切な剣のようなので、隠しております。あの剣の謎についても少しずつ分かってきたので、奪われてしまわない様にとの策です」





シュクルスの言葉を聞いて、フェルノールの顔色が少し変わった。



「どこに隠したのか教えてって言っても、教えてはくれないでしょうね?」





シュクルスは、その言葉には何も答えなかった。





「とにかく、あの剣はあなたのような人間には手に負えないものなのよ。早めに返しておいた方が身のためよ」



そういって、シュクルスを一睨みする。





「……ふん。無くしたり、他のものに奪われたりしないようにね」





フェルノールは、シュクルスの背後の方へ歩いて行った。



シュクルスたちも、ニーナの部屋へ戻ることにした。


そして、ニーナの部屋の扉を開けて告げた。





「……作戦第一弾は、完了です!」







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