41話:未仔ちゃんとの甘々デート PART5

 生地をもう1度ひっくり返せば、今度は未仔が質問するターン。


「ナツ君はお休みの日、何して過ごしてるの?」

「俺? そうだなー……。大体は琥珀ん家でゲームしたり、漫画読んだりかなぁ」


 ハケでお好み焼きにソースを塗っていた未仔の手が止まる。


「琥珀って、あの綺麗な先輩さん?」

「えっ。綺麗?」


 未仔から発せられる言葉の意味が理解できず、夏彦はしばしのポカン状態。

 数秒後、「ああ~」と納得した面持おももちに。


「違う違う。綺麗な先輩は伊豆見いずみ草次だよ。ガサツな関西女のほうが冴木琥珀ね」

「??? やっぱり、合ってるっぽいよ?」

「……。琥珀が綺麗……?」


 未仔が1つ頷けば、夏彦は否応なしに悪友の顔を思い浮かべてしまう。

 勝気で大きな瞳に、歯に衣着せぬ物言いを可能とする大きな口。ゲームで劣勢なときなど一層に眼光鋭く、「ラグいねん、アホンダラ」と一層口も悪くなる。

 しかしだ。心から楽しんでいるときの晴れやかな笑顔は、隣にいる自分さえ笑顔になってしまうほどの魅力がある。


「言われてみれば、綺麗、なんだよな……?」


 夏彦は呟いてから、ハッ! とする。

 目の前の未仔が、コチラを見ているから。

 じ~~~っと。


 いくら恋愛に程遠い生活を送って来た夏彦でも、彼女が何故そのような視線を送ってくるのかくらい分かる。

 何よりだ。知れば知るほど残念な女が琥珀だが、知らない人間からすれば、モンスタースペック、初見殺しな琥珀ということを重々知っている。


 高スペックを有する美少女と、平日どころか休日さえプライベートを共に過ごす。

 何も無いほうが不思議と思うのが自然の摂理。

 夏彦を愛して止まない未仔なら尚更に。


「ないないない!」


 夏彦、身振り手振りで大慌て。


「あ、安心して! 未仔ちゃんが思ってるようなことは、琥珀とは一切有り得ないから!」

「……ほんと? 実は、お互い恋愛を意識してたような関係だったりとか……?」

「そんな展開は微塵みじんも無いから!」

「ナツ君と琥珀さんは昔付き合ってたり――、」

「そんな過去も背負ってないよ!」


 夏彦が必死に弁明すればするほど、ジト目な未仔の頬がぷっくり膨らんでいく。

 膨らめば膨らむほど、夏彦はどうすれば誤解が解けるのだろうとシドロモドロ。


 論より証拠。

 しかし、証拠がない。論を語れるほど口も達者ではない。

 ならば誠意を示すのみ。

 錬金術師ヨロシクに、夏彦は盛大に両手を合わし、未仔神様みこがみさまを拝む。

 渾身こんしんの気持ちを込めて言うのだ。


「約束します! 俺が好きなのは正真正銘、未仔ちゃんただ1人です!」

「…………。……ふふっ」

「え?」


 渾身の誓いに対し、聞こえてくる小さな笑い声。

 夏彦は思わず顔を上げてしまう。


「み、未仔ちゃん?」


 目の前には、膨らませていた頬をしぼませ、小さな肩を上下させる未仔の姿が。

 夏彦が目をパチクリさせれば、もう我慢できないと、未仔は声を出して大笑いしてしまう。


「~~~もうダメ! ナツ君、焦りすぎだよっ!」

「あ、焦りすぎって……。未仔ちゃん怒ってるんじゃないの?」

「ううん、全然怒ってないよ」

「……。ええっ!?」

「ナツ君がすごい慌ててるのが可愛くて、ついついイタズラしちゃいました♪」

「ええええええっ!?」


 予想通りな反応に未仔は小さく舌を出す。

 大成功と言わんばかりに。


「一緒に遊んでるだけで怒らないよ。むしろ、男女関係なく友達同士なのって、いいなって憧れちゃうくらいだもん」

「証拠も何もないけど、信じてくれるの?」

「ナツ君の言う事だもん。信じるに決まってるよ」

「……っ!」


 夏彦、鉄板に涙を零してしまいそう。

 改めて思う。

『未仔ちゃんが変な男に振り回されぬよう、自分がしっかり大事にしなければ』と。


 熱い誓いのかたわら、未仔はお好み焼きへマヨネーズや青のり、鰹節をふりかけ終わる。さらには、カットしたお好み焼きを夏彦の小皿へと盛り付ける。

 そして、箸で切り分けたお好み焼きを、ふーふー。

 自分のため?

 ではなく、


「意地悪してゴメンね。お詫びにどーぞ」

「!!!」


 未仔、詫び石もとい、詫びお好み焼き。

 唐突なあ~んチャンス到来に、夏彦のドキドキは天井知らず。

 夏彦が「いいんですか!?」と目を輝かせれば、「もちろん♪」と言いたげに未仔もニッコリ。

 本日、五度目くらいの『もう死んでもいい……』と思える幸福感に包まれつつ、夏彦は愛情たっぷりお好み焼きを胃に収めるべく口を開く。

 しかし、寸でのところで、


「ナツ君、ナツ君っ」

「ん?」

「あのね。さっき言ってくれた言葉、もう1度聞かせてほしいな?」

「さっき? ……あっ」


 未仔が求めている言葉を理解してしまえば、夏彦は赤面せずにはいられない。

 できることなら言いたくはない。本心ではあるが、改めて口にするのはやはり恥ずかしい。

 けれど、言わなければ口前にある極上のお好み焼きが食べられない。

 食べたい。けれど、恥ずかしい。

 迷うこと数コンマ。


▶極上のお好み焼き

 ちっぽけなプライド


 勝者、極上のお好み焼き。


「え、えっと……、俺が好きなのは未仔ちゃんただ1人、です……!」

 プロポーズチックな言葉に、未仔も表情がさらに華やかに。

「うんっ。私もナツ君、だーいすき♪」

 よく言えましたと、夏彦の口へとお好み焼きがプレゼントFORYOU。


「(もう死んでもいい……っ!)」


 できたてのお好み焼きはかなり熱々。

 とはいえ、今の夏彦には常温に等しい。






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お好み焼きfeat.ヤキモチ

ヤキモチと見せかけてイタズラ、という話でした。


【雑談】

ここ最近、おっぱい以外の作品も書こうとプロットを練り練りしています。

こっちを蔑ろにする気はナッシングなので、そこはご安心を。


こっちは欲望に忠実に、まったり楽しく、

別作品は新たなる萌えとエロスを求めて。


あんまし変わんねぇ。



WEBに投稿するか、今お世話になってる担当さんに見てもらうか、どっかの賞に応募するか分かんねーですが、ぼちぼち頑張りまっす。




おっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞʅ(◔౪◔ ) ʃ

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