36話:作戦会議は◯◯と……?

 深々と更ける夜。

 琥珀の家から帰宅した夏彦は、ある程度の調べものを終え、大きく背伸びする。

 おまけに、高まる気持ちや鼓動を抑えようと1つ2つと深呼吸。


「よし……」


 機は熟した。夏彦は操作し終えたスマホを耳へと付ける。

 数コールも待てば、愛嬌たっぷりな幸せボイスが聞こえてくる。


『ナツ君♪ こんばんは!』


 電話相手は愛する彼女、未仔。

 電話の約束などしていない。にもかかわらず、耳を立てて尻尾をブンブン振り回す仔犬のような声音に、夏彦の表情も思わず緩んでしまう。

 しかし、今は声音やセリフに癒されている場合ではないと、気を引き締め直す。


「夜遅くにごめんね。今週のデートについて、どうしても相談したいことがあって電話したんだ」

『デートの、相談?』

「うん」


 草次に助言されたあの時から、夏彦は言うべきことを決めている。

 だからこそ、電話越しでも本音をハッキリと告げることができる。


「本当はさ。未仔ちゃんにデートの内容は何も相談しないで、自分だけの力でバシッと決めようと思ったんだ。けど、」

『……けど?』

「気付いたんだ。バシッと決められるか分からないデートプランを考えるくらいだったら、しっかり未仔ちゃんに相談したほうが良いデートになるって」


 何も1人でカッコつける必要などなかった。

 草次の言う通り、未仔は自分の全てを受け入れてくれている。

 未仔は知っているのだ。夏彦の弱い部分や優柔不断なところも。

 夏彦は気付いたのだ。全てをひっくるめて、未仔は自分のことを大好きでいてくれていることに。


 拒まれてしまったらどうしようなどと、夏彦は恐怖しない。


「だからさ。俺の――、じゃなくて! 俺たちのデートプラン、相談に乗ってもらってもいいかな?」


 彼もまた理解している。

 愛する彼女が快諾してくれることに。


『喜んで♪』


 夏彦もまた、未仔の全てを受け入れている。故に、未仔が相談に乗ってくれることを信じるのは容易たやすかった。

 容易くはあった。けれど、電話越しからでも伝わってくる未仔の笑顔を想像してしまえば、一気に嬉しさが溢れ出してしまう。「ありがとう!」と思わず頭も下げてしまう。

 ネットで調べたデートスポットを、夏彦はウキウキ気分でスクロールしていく。


「最初のデートは、高校生らしく繁華街やモールがいいと思うんだけどどうかな?」

『うんっ。私もナツ君と色々お買い物したいなって思ってたから大賛成!』

「ほんと!? 良かったぁ~……。あ、あのさ!」

『?』

「もし良ければ、未仔ちゃんに服の買い物に付き合ってほしいんだ。というか、色々とアドバイスをくれたらなって」


 夏彦が照れ臭くも、「恥ずかしい話、オシャレには無頓着な生活を送ってきたもので……」と述べれば、未仔はクスクスと笑う。

 勿論、『お前、ダサすぎワロタ』と馬鹿にしているわけではなく、


『全然恥ずかしい話じゃないよ。それじゃあ、お言葉に甘えてナツ君を着せ替え人形にしちゃおうかな?』

「き、着せ替え人形……?」


 その魅力的なワードに、夏彦は妄想せずにはいられない。

 アパレルショップの試着室。未仔が自分をカッコ良く、オシャレにしてくれようと、せっせと色々な服を用意してくれたり、着替えさせてくれたり。

 着せたり、脱がしたり。着せたり、脱がしたり。


「是非ともよろしくお願いします!」


 色んな意味を含んだ、よろしくお願いします。そんな夏彦の発言にも、未仔はドン引くこともなく微笑み続ける。


 のだが、


『くちゅんっ』


 未仔の鳴き声?

 ではなく、可愛らしい音の正体はくしゃみ。


「だ、大丈夫?」

「えへへ……。ちょっと寒い格好してるから」

「寒い格好?」


 寒い格好と言われれば、琥珀の超絶ラフ、タンクトップ&ハーフパンツな部屋着を夏彦は思い浮かべてしまう。

 アリかナシかで言えば、大アリ。しかし、おっとり小動物系の未仔にしては少々意外な格好をしているのだというのが率直な感想。 


 そんな感想はあっけなく散る。

 モジモジする未仔が、恐る恐る言うのだ。


『えっとね……? ナツ君、笑わないで聞いてくれる?』

「? う、うん」

『私、今裸なの』

「………………。ええっ!?」


 琥珀の格好の比じゃないラフすぎる格好に、夏彦、怒涛の衝撃。

 健全な男子たるもの、裸の彼女が電話してくれている姿を想像してしまうのは自然の摂理である。

 勿論、部屋ではスッポンポン系女子というわけではない。

 未仔は何故、今現在、裸なのかを説明する。


『入浴しながらスマートフォンを触ってたら、電話が掛かってきたの。『誰からかな?』って確認してみたらナツ君からなんだもん。ついつい嬉しくて、大急ぎでお風呂場から出て電話取っちゃうよ』

「ってことは、身体も拭いてないまま電話に出てくれたの?」

『……えへへ♪』

「~~~~~~っ!」


 可愛さ不可避。彼女の咄嗟の行動や照れ笑いに、夏彦は悶絶せずにはいられない。

 今すぐ抱きしめたい衝動にすら駆られてしまうが、現状の濡れ濡れで一糸纏わぬ姿を想像してしまえば、抱きしめるより先にすべきことがある。


「ご、ごごごごごめん! 事情も知らずにダラダラ喋ってて! 風邪ひいちゃうから、お風呂に浸かり直してください! 電話はその後でしよう!」

『じゃあ、お言葉に甘えようかな。お風呂で電話できたら一番なんだけど、さすがに反響しちゃうもんね』


「反響しなかったら、電話してくれるの……?」と悶々とする夏彦に、『また後でね』と告げた未仔が電話を切る。

 切られた瞬間、夏彦もショート。

 ベッドにダイブ。さらには、マットに顔を押し付けスパーキング。


「~~~~~~~~っ! 未仔ちゃんが健気で可愛いすぎる~~~~~~っっっ!」


 夏彦のオラ、ドキドキすっぞ状態に、「夏兄うるさーい」と隣部屋の新那から苦情が入る。

 それでも夏彦は、この止めどない気持ちを静めることはできないと、ドキドキし続ける。






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久々の未仔ちゃん、すっぽんぽん。

『裸で電話』って想像したら、だいぶエロい。

良き。



次回、閑話を挟んで、いよいよデート編へ!

安心して。閑話も甘い。



【雑談】

いただいた感想に目を通していると、「この小説で日本語を勉強している」という他国のおっぱいフレンズが。

めちゃくちゃ嬉しい反面、「お前さん、教材がコレでええんか……?」という気持ちも。

とにもかくにも、おっぱい万歳っ!!!

日本語の勉強頑張って!!!



おっぱいは世界を繋ぐと思うフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどうぞ。

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