第67話

 今日もお腹が痛いと言って早退する。多分、痛いのであろう。

うん?正直に言えば痛くはない。決して嘘をついた訳ではなく、痛い確率があったのだ。痛いか痛くないかはお屋敷に着くまでわからない。お屋敷に着くと痛くはない。確率的に痛くないのである。


 そんなことはどうでもいいが夏が自室にこもっている。わたしは夏の部屋のドアを開ける。


「恋菜様、プライベートです」


 早めにお屋敷に戻ると時々プライベートらしい。夏はベッドに横になり小説を片手にチョコレートを食べている。


「わたしも食べたい」


 夏にチョコレートをねだると部屋の奥からお菓子セットを出してくる。


「この様な何処にでもあるようなお菓子でしたら沢山あります」


 わたしは夏に感謝してチョコレートを食べ始める。


「ところで何の小説を読んでいるの?」

「BL本です」


 夏も恥じらいがないなと思う。そもそも、BL本にも非エロ本もあるのであろうか。アプリの乙女ゲームなる物が有るくらいなら非エロもあるのか。


「それで、その本の内容はどんな感じ?」

「最初から最後まで濡場です」


 聞いたわたしがバカであった。夏もまた、健康な女子である。あれ?この表現で合っているのであろうか?平日の昼間にプライベートの多い夏では友達と遊ぶのも大変であろうからな。


「夏、今からスイーツ作りをするの、食べてくれる?」

「はい、喜んで」


 夏はBL本を本棚の奥深くに隠して部屋を出る。わたしはいつもの様にスイーツ作りを始める。


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