第63話

 体育の授業の事である。何故かソフトボールのグローブ借りてノックを受けていた。簡単なゴロだけを受けて、強めの球は逃げていた。


「月之宮さん、やる気はあって?」


 同じクラスにいる、ソフトボール部のキャプテンがボールを打つのであった。どうやら、クラス対抗のソフトボール大会のメンバーを決めているらしい。次はバッティングの練習である。


……。


 虚しい結果で終わった。八割がピッチャーゴロであった。その次はベンチの温めかたである。具体的にはヤジの飛ばしかたで、流石にアホ臭くなるのである。わたしは一人、教室に戻るのである。しばらくして、脱落組が戻ってくる。こんな時も協調性のないわたしは一人で自販機に向かう。さて、自販機でお茶を買い。校舎裏に行くのである。わたしは彼を呼びだして密会を計画してみる。


『男子のソフトボール大会のレギュラーになったので行けないよ』


 ふざけた内容のメッセージが返ってくる。彼はサッカー部の三軍のくせに生意気だ。ま、良い、校舎裏で木漏れ日を楽しもう。右手を上げて揺らぐ木葉をつかもうとする。柔らかな光がつかめそうであったからだ。ふ、センチメンタルな気分になった。わたしは校舎裏を後にして教室に戻る。教室の中は体育終わりの独特の空気である。


「月之宮さん、あなたはベンチで見学です」


ソフトボール部のキャプテンが説明する。どうやら、ヤジは飛ばさなくてもいいらしい。昼休みを挟んで、次の授業までわたしは空を眺める事にした。そう、魔女に団体スポーツは似合わないのである。

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