第56話

 園芸部の活動中の事である。雨が降っているのに水をあげろと部長が言い出す。


「月之宮さん、ぼっーと、立ってないで、お花に水をあげて」

「雨で濡れています」

「わたしは水をあげてと言ったのよ」


 呆れるほどのパワハラだ。わたしは平和主義者なので顧問に訴えたりしない。

それでも濡れた土に水をあげるのは問題だ。部長を花の前まで連れて行き、土が濡れている事を二人で確認する。


「園芸部の活動は限られているのよ、お花は生き物です」


 要は枯れさせたりしなければ良いのだ。わたしの園芸も初心者から中級者になった。それでも部長は先輩面したいらしい。わたしは平和主義者だが協調性はない。

不機嫌な部長を放置して帰る事にした。帰り支度をしていると……。


「月之宮さん、旅行のお土産があるの」


 何度も言うがわたしは平和主義者である。素直に受け取り、お礼を言う。そうか……ここのところは園芸部の活動が無かった。だから、お水、お水と騒いていたのか。今日の雨は何時も以上に気分が悪い。部長も晴れた空でお水をあげたかったのか。しかし、わたしは協調性がない。部長の気分など知らない。お土産のクッキーを食べて、帰るのであった。うん、こってりした味のクッキーだ。わたしは缶コーヒーを買い、こってりした味を中和する。この雨はブラックの缶コーヒーを美味しく感じさせていた。さて、帰るか、わたしの帰路に問題の二文字はないのであった。

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