第50話

 段々と日の出が遅くなる季節であった。少し冷えるのでストッキングを履く事にした。ブレザーの制服に紅色の髪、椿色の瞳と目立つので黒タイツなど厳禁である。コンビニで売っている様なシンプルな物であった。わたしが洗面所で寝ぐせを直していると、姉の愛菜とすれ違う。双子の姉は紅色の髪に琥珀色の瞳である。

香水のいい香りに黒タイツを履いていた。目立つなーと思うが可憐なオーラはいやらしさを感じさせないのである。わたしが黒タイツなど履いたら、娼婦かと思われそうであった。


「恋菜さん、どうしたの?」


 どうやら、見入っていたらしい。


「ハイカラな黒タイツね……」

「ありがとう、誉め言葉として受け取るわ」


 姉は香りと共に去っていった。顔や体格がほとんど同じなのに何が違うのであろう?わたしはいつもの劣等感に悩まされていた。姉の高校での成績は今年も特待生である。それでして、勉強に苦労している様子はない。わたしは利き腕が痛くなるほど勉強しても届かない。夏の話では受験勉強などしなくても横浜国立大学等は簡単に入れるらしい。陰気な気持ちで朝食を食べていると。夏が紅茶を持ってくる。


「あら?まだ、頼んでいないのに……?」

「少し熱めのお湯でしたので、お早めに、お持ちちました」


 わたしは夏の気配りに気分が変わる。そう月に魅入られた魔女ですもの……。

プライドを持って生きていかなければ。わたしの存在が正義であって。いいえ、『信念』の二文字の方が正しくて。それは魔女しての『信念』であった。三日月の光の下で言霊を操り、その生き方を選んだのだ。わたしは姉とは違う庶民の高校に通う事にしたのだ。夏の見送りを受けわたしは登校するのであった。

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