第32話
月の綺麗な夜の事である。季節外れの暑さの中で目が覚める。月明りに導かれ庭で石に腰かけてチーズケーキを食べる。団子でも良かったのだが、やはりチーズケーキだ。姉の愛菜が庭に出てくる。夜中に何用かと思うと、月に導かれたらしい。姉は『三日月の魔女ね』と呟く。わたしの事なのか自分の事なのか不明の呟きであった。
「自称なんて面白くないわ」
わたしはかまをかけてみた。
「なら、わたし達なら良くて?」
そうきたか……最初の呟きが不明になった。姉の第一印象でのわたしの事が三日月の魔女なのかと考える。
「この月之宮家は呪われた一族、魔女の肩書が必要ね」
姉の言葉にわたしは困惑する。双子なのに眼の色だけが違う。そして、姉は姉の肩書が不変で、同じ日に生まれても姉と呼ばなければならないのが変わらない。
「愛菜さん、あなたには魔女の肩書は必要ないわ」
わたしは『三日月の魔女』と呼ばれるのが気に入っていた。姉はわたしの欲しいモノをすべて手に入れる事ができる。だから、魔女の称号はわたしが欲しいのであった。姉は落ち着いた様子で笑う。
「魔女の通り名はあげるわ。わたしが満月なら、やはり三日月はあなたね」
言われなくても分っていた事にわたしは腹を立てる。
「素直な子ね……」
わたしのふくれっ面を見てクスクスと笑う。やはり、姉には勝てない……。
「愛菜様、恋菜様、時間外にわたくしを働かせないで下さい」
夏が起きてきて言う。わたしは夏のジョークに機嫌が直り寝る事にした。姉はもう少し月を見ているらしい。その姿は妖艶でやはり『三日月の魔女』であった。ホント、わたしの欲しいモノはすべて持っていくわと思うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます