親子の判別、金で解決⁈
「10歳の息子と私の名字は違います。でも、顔は見てもらえばわかると思いますが、そっくりです。それでも、親子証明(の書類)って必要なんですか?」
「必要です」
受話器の向こうの日本人男性は、かなり焦っていました。
「わかりました!今から、そちらに行きますから、すぐに書類を出してください!お願いします!明日、出発なんです!!」
フィリピンでは、親と名字の異なる15歳未満の子供が、親と一緒にフィリピンに入国する際、親子であることを証明する書類を提示しなければ入国が認められません。
これは、子供の誘拐や人身売買を防ぐためです。
「申し訳ございませんが、こちらでは、親子証明の書類は発行しておりませんが」
「そんな~!」
受話器から、叫び声ともうなり声ともとれるような声が聞こえて来ました。
数秒後。
気を取り直したのか、男性が言いました。
「フィリピンなんて、お金を払えば、なんとかなる国なんでしょう?」
こう言う人、結構、多いんです。
数ヵ月ほど前に
「フィリピンなんてさ、金でどうにでもなる国じゃん?エクスプレス(料金)とか、スーパーエクスプレスとか言って、金取るんでしょう?」
と言ってフィリピン人担当を激怒させた、自称大学院生がいました。
「その話、担当に直接、英語でお話して頂けますか?」
大学院生は「わかったよ」と鼻で笑って答えましたが、担当にはすました表情で担当に「カモン」と言いました。
英語が話せない生意気な自称大学院生のために、私が担当に院生の生意気な発言を通訳しました。
担当は、生意気な自称院生をまっすぐに見て、静かに言いました。
GET OUT!
院生よ。フィリピンは、空港行きの電車じゃないぞーっ!(ノ>д<)ノ
さて。電話のお父さんに話を戻しましょう。
「フィリピンだから、空港でお金払っちゃえば、なんとかなりますよね?」
おとーさーんっ!(ノ゜O゜)ノ
今、なんて言ったぁ?
「お金払えば、親子証明の書類がなくても、私たち似てるから大丈夫ですよね?」
私は、大きく息を吸ってから、一気にお父さんに言いました。
「子どもの人身売買や誘拐を防ぐ目的から、私どもでは、名字が違う親子(子どもが15歳未満の場合)が渡航される際には、事前に親子証明を取るようにお願いをしております。どうしても、書類なしで入国されたいのでしたら、フィリピンの入国管理局に電話をして、確認してくださいっ!」
男性は、数秒ほど、黙っていましたが、納得がいかないのか、言葉を変え、何度も「大丈夫ですよねぇ?」と繰り返してました。
その度に私は「こちらでお答え出来ることではありません」と返事しました。
「(親子証明の)書類を持たずに入国出来たケースはありますか?」
「こちらでは、そのような話は聞いておりません」
「じゃあ、飛行機に乗れても、フィリピンに入れないってことですね?」
男性は10分ほど、電話を切らずに何度も同じ質問を繰り返しました。
私が「お金を払えばなんとかなる」と言わないので諦めたようです。
ため息混じりに電話を切りました。
余談ですが。
親子証明もしくは保護者による渡航承諾書がないと、航空会社が搭乗を断ることがあるようです。
小学生の孫と一緒にフィリピンへ行こうとした日本人男性が、空港で、フィリピン大使館から発行された保護者の渡航承諾書を持っていないことを理由に搭乗を断られました。
旅行代理店は、男性とお孫さんが同じ名字だったので、親子だと思い発券してしまったようです。空港に現れた2人を不審に思った航空会社が確認したところ、親子でないことが判明しました。
「孫にセブの海を見せてあげたかった。承諾書が必要だとは、飛行機に乗るまで知らなかった」
相談センターに電話をかけて、旅行代理店の愚痴をこぼした男性の声は、大変沈んでいました。
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