二
ゴミ捨て場に着くと、まだ回収に来ていないみたいでゴミが山のように積んである。
カラス除けのネットを上げると、私の横からポンと誰かがゴミを投げ入れた。
文句を言ってやろうとキッと睨むと、足早に帰って行くショートヘアの女の人の後ろ姿だけが見える。
私は諦めてゴミを捨てるけれど、さっきの人が投げ入れたゴミ袋の口が開いてバラバラと中身が落ちて来た。
何かを言いたげに、近くでカラスが鳴いて、私はもう一度カツカツとヒールの音をさせる女の人の背中を睨む。
「ちょっと。ちゃんと縛ってよね」
けれど何となく無視できなくてそれを拾って縛る。その中で大量の薬が手つかずのまま捨てられているのが気になった。
「飲まなくていいのかな? まぁ、関係ないか」
さて、これからどうしようかと考えていると、自然と足が亀池公園へ向いた。
まだ朝と言える時間。屋台広場のあったか亭に着くけれど、あの茶碗の神様はいない。
そう言えば昼間は何をしているのだろうかと考えるけれど、全く分からない。
いつまでもそこにいても仕方がないので、私は公園の周囲にある竹林の散歩道をブラブラと歩く事にした。
そこにだってきっと、何かしらの神様がいるはずだから。
思った通り、刀を腰に刺した神様が頭に雀を乗せて歩いている。
その神様について歩いていると、神社の入り口にいる狛犬が竹藪から飛び出して来た。あの口を開けた方だ。
刀の神様がとても困っているので、私は狛犬を呼んで一緒に遊ぼうと言ってみた。
すると狛犬はくるくると私の周りを走り回ってから、どこかに走っていく。
追いかけていくと、公園の遊具のある場所に着いた。
「遊具で遊ぶの?」
狛犬は答えずに、また走り出す。
そして狛犬は水道で足を洗っている男の子の所まで行って、ちょこんと座る。
よく見ると男の子は足に怪我をしている。
男の子は狛犬と私を交互に見てから「神様?」と聞いてきた。
「この狛犬の方はね。私は普通の中学三年生だよ」
「そう……」
男の子は狛犬をじっと見ていたけれど、狛犬の方は口を閉じた方が迎えに来て、どこかへ帰ってしまった。
「怪我したの?」
私が聞くと、男の子は絆創膏を貼りながら「たいした事ないけど」と答える。
それからすぐに立ち上がって、大きなパンパンのリュックを背負って行こうとする。
「大きなリュック」
「家に帰れないから」
男の子のその言い方が気になって、私は少し聞いてみようと思った。
「私も明日の朝まで帰らないつもりだよ。どうしたの?」
少し興味を持ってくれたみたいで、彼は私に話してくれる。
名前はトトリというらしい。近所に住む十一歳の子だった。
歳のわりに随分と大人びていると言うか、冷めた感じに思える。
「お父さんが帰って来ないから、探しに行こうと思って」
トトリが言う。
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