第1292話 キリハさんともハモっちゃったわ。的なお話

ロクショウさんが戸を開けて中に入るとそこはお座敷が広がっていて……ていうのをイメージしていたんだけど、そこまで広くはなくて、畳なのでお座敷というのは間違いじゃないけど、殿様が居るような広々としたというイメージとは違って、応接間ってレベルの広さだ。

そこに机と座布団が置かれている。

なんか、落ち着く広さだ。


「よく来てくれました。そこにある座布団に座ると良いですよ。ああ、座布団は分かりますか?」

「はい、大丈夫です。」


座布団はフカフカでした。

実家の奴の3倍くらい座り心地いいです。


「お久しぶりです、レントさん。」

「お久しぶりです、キリカ様。」

「ああ、そんな堅苦しくしなくていいですよ。普通に娘に対しているのと同じように接してください。」

「いえ、そんなわけには……。」

「ダメですか?」

「……分かりました。」

「ユキノさんもお久しぶりですね。」

「そうですね、キリカさん。来るなら来ると言ってくれたらよかったのに。」

「連絡出来ずすみません。」

「えっと、それは俺が頼んだからなんですよ。この国の礼儀作法に自信が無いので一緒に来て欲しいと。なので怒らないであげてください。」

「怒ってませんよ。ですが、ユキノさんが来たのなら娘を呼んだ方がいいですね。ロクショウ。斬葉をここに。」

「はっ。かしこまりました。」


うわっ!?

ロクショウさん居たんだ……。

全然気付かなかった。


「さて、斬葉が来るまでの間にユキノさんに聞きたいのですが、ユキノさんから見てレントさんはどんな方ですか?」


うぇっ!?

なんでこのタイミングで聞くの!?

というか、恥ずかしいんで本人の前で聞くのやめてくれませんか?


「そうですね……レントは普通の人、ですかね。英雄役に選ばれましたけど、本人は至って普通の、優しくて、誰かの為に怒れて、かっこよくて、でもどこか抜けてるところもあって、失敗したり苦手なものもあったりと、本当に普通の人です。冒険者として見ればレントは私よりも上の存在です。でもそれは特別強い能力を持っていたわけではなく、ちゃんと努力して、時には失敗して、苦労を重ねた上での強さです。だからこそ、冒険者として一緒のパーティでいられるんだと思います。優れた所は数限りなく、欠点らしい欠点もないような人だと、多分気疲れして長続きしなかったと思います。」


ちょいちょい普通の人と言われると、なんかもやっとするな。

いや別に、俺自身特別な奴だとは全然思ってないよ。

異世界人っていう立場は特殊だけど、それ以外は特別な奴ではない。

でも、普通と言われるのはなんかなぁ……。


「そう……なら、お二人は恋仲というわけではないんですね。」

「「そんなんじゃありません!」」

「それなら良かったわ。気兼ねせずに済みそうで。」


タイミングぴったりでちょっとびっくり。

ところで、気兼ねせずに済むって何がですか?


「恋人ではありません。ですが……」


ん?

何?

なんで今ちょっとこっち見たの?


「すぅ……はぁ〜……。個人的には、レントの事を、好いております。」


え、は、え?

今、なんてったの?

誰が何を梳いてるって?

すいてってそもそもなんだっけ?

すく?

梳く?

透く?


「あらそうなの……しかし、それは困りましたね。」


あ、好くね。

そっかぁ……なんで?

そんな素振り今まで無かったよね?

それがなんで急にそんな……?


「別に困ってなんかないですよね。そもそもレントを今日招いたのは……。」

「お呼びでしょうか、お母様。」

「彼女と、キリハと婚約させようと思っての事でしょうから。」

「「え?」」


あ、キリハさんともハモっちゃったわ。

あはは。

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