第1291話 鬼人族だったね。的なお話

ふぁ……今日ついにリュウガミネさん家に行くのか。

眠い……緊張して寝付けなかった。

だったらいいんだけどねぇ。

いつも通りの展開でちょい寝不足。


「レント、準備は出来ているか?」

「ああ。今開けるよ。」


ユキノがやって来たので部屋の戸を開けると、そこには艶やかな着物を身に纏った美少女がいた。


「む? どうした?」

「あ、いや……凄い可愛くて驚いた。」

「か、かわっ!? な、何を馬鹿なことを……。」

「馬鹿なことじゃないさ。なぁ?」

「うん。凄く可愛いよ。」

「ん。似合ってる。」

「そ、そんな事よりも、早く行くぞ。いつ迎えが来るか分からないんだからな。」

「そんな事じゃないと思うんだけど……まあ、本人がそう言うのなら。それじゃあレント。いってらっしゃい。」

「ああ、いってきます。」

「いってらっしゃい。」

「いってらっしゃいお兄さん。」


宿の入り口でしばらく待っていると家老と言うべきヤマト服の老人がやって来た。

老人と言っても背筋は曲がっておらず姿勢は良く、その視線は鋭くイケ爺と言いたくなるような雰囲気を持っている。

なんでこの手の仕事をしている人達ってこんなにかっこいい雰囲気を纏っているんだろうね?


「お迎えにあがりました。レント様。それと、数日ぶりですね、ユキノ様。本日はどのような御用件で?」

「お久しぶりです、ロクショウさん。レントがそちらに赴くという話を聞き、友人を訪ねるのに都合がいいと思い、厚かましくも同行させて頂こうかと思いまして。どうでしょうか?」

「貴方はキリハ様のご友人ですしきっとキリハ様も喜ぶでしょう。」

「ありがとうございます。」


誰この子?

そう言いたくなる程、普段との差がある。

こんな喋り方も出来たんだ。


「では、こちらへどうぞ。」


馬車に乗り、ロクショウさんとやらはそのまま御者台に乗ると馬車は進み出す。

そういえばこういう世界観というか、国なので街中の移動は旅籠とかだったりしないかなと少しだけ期待していたけど、そんな事はなかったな。

普通に馬車だった。


「そういえばさ、なんでユキノから同行させて欲しいって言ったことにしたんだ?」

「それはレントが招待された客だからな。礼儀作法で不安だからと頼ったというのは少々情けなく思われるだろう?」

「いや別に俺は気にしないけど。」

「確かにレントは気にしないかもしれないが、こうして恥をかかせないというのも礼儀の1つなんだ。」

「ふーん。じゃあとりあえずここは、ありがとうと言っておくべきか。」

「気にするな。」


そして馬車に揺られる事10分経った頃に馬車の揺れが止まった。

ん?

もう着いたのか?

このくらいなら歩いてでもいい気がする。

まあ、大名が客を招くのに徒歩で来るようにっていうのはおかしいか。


「着きました。足元に気をつけてお降り下さい。」

「ありがとうございます。」


馬車を降りて先ず目に入ったのはリュウガミネ家。

そのリュウガミネ家は見事なまでの武家屋敷だった。

武家屋敷とか江戸時代や明治初期の屋敷といえばでまず連想されるであろう、ザ・武家屋敷な景観をしている。

ここまで似るのも珍しいな。

この屋敷を建設したのは転移者か転生者だったりするのかね?

まあ、これまでの経験からしてそういう事もあるだろう。

意外とそこら辺にいたりするからね、あいつら。

俺自身がそうだし。


武家屋敷の中に入ると手入れの行き届いた見事な庭園と枯山水、鯉が泳ぐ池と中も凄いぽいな。

ただ残念な事に鹿威しはない。

かっこんかっこん鳴るのが五月蠅かったのだろうか?


ロクショウさんに案内されるままに着いて行くと1つの部屋の前に到着する。

この戸の向こう側にキリカさんが居るのか。

さて、鬼が出るか蛇が出るか。

あ、出てくるのは鬼でしたね。

キリハさんもキリカさんも鬼人族だったね。

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