第1282話 そういう事らしいです。的なお話
宿に帰るとそこにはスズランさんがいた。
またですか……。
「今度はなんの用ですか?」
「出版社に持ち込んだ所すぐに書籍化することが決まりまして、それで出来ればでいいのでサインを書いてくださらないかなと思いまして……ああ、もちろん発売日にサインをという事ではなく、こちらの紙に事前に書いていただき、それを製本時に一緒に入れるという事です。ダメですか?」
「まあ、少しだけならいいですよ。」
「ありがとうございます!」
またサインか……。
本当にこの国では有名人なんだな。
でも5年後くらいにはこれ要らなくね? って捨てられたりして。
そうなったら多分泣く。
スズランさんが持って来た紙は全部で100枚あったよ。
その全部にサインを書いていくものだから大変で大変で……普通に生きていく上でこんだけの数の名前を書く事なんてまずあり得ないからね。
合計ならともかく短時間でってのは流石に経験ない。
教科書ノートでもここまでの数ないし。
「ありがとうございます! では早速出版社に持って行きますわ!」
嵐のような人だったなぁ……。
「それで、そちらさんはなんの御用で?」
スズランさんと入れ替わるように誰かやって来た。
女性の方だけどあいにくと見覚えはない。
サイン欲しさについに宿にまで着いて来ちゃったとかそういうのじゃない事を願うばかり。
「私は冒険者ギルドの者です。オークションが終わりましたのでその代金をお持ちしました。本当は朝来た時にお渡ししたかったのですが、バタバタしてまして……それにこちらに気づいていないようでしたので。」
「あー、なんか聞こえてる気がしたけど、あれはそういう事だったんですか。」
ヤバめな人じゃなくてよかった。
しかし、あの時の声の主はこの人かー。
まあ、あの時は人が集められていたみたいだし、それでガヤガヤと喧騒もあって人の声をまともに聞き分ける事なんて難しいし仕方ないとしか言えない。
「立ち話もなんですから、どうぞこちらへ。」
「失礼します。」
部屋へと招き入れて早速報酬の話をする。
「ではこちらが、鵺、牛鬼その他諸々の代金から諸経費を引いたものとなります。明細はこちらとなっております。どうぞご確認ください。」
えーと、鵺が3000万……。
3000万?
3000万ってなんだっけ?
3000万は3000万なわけで……えっと……は?
3000万!?
なんで!?
そんで牛鬼は牛鬼で1600万の値段が付いてるし。
鵺は確か真っ二つに焼き斬ったはずだぞ?
牛鬼は顔面から2方向に向かって貫通する穴があるしとてもじゃないけどいい状態とは言えないはずなんだが……。
後はダンジョンの発見に繋がった事に対する報酬なんかもそれなりの額になっていて、諸経費が引かれてるのに全部合わせて約5100万リム。
うわぁ……。
何この額……ドン引きなんですけど。
「えっと……なんでここまで高いんですかね?」
「鵺は報告件数自体少ないので大名はもちろん研究者達がこぞって競い合ってくれたのでその分値が上がりました。解体して細かく売ればもう少し行ったかもしれませんが今回はそのまま売りに出しました。牛鬼ですが、こちらはこちらで希少な魔物ですので高値がつきましたが、毒が厄介でまた顔が潰れている事もあり大名達はあまり乗り気ではありませんでした。なので鵺ほどには上がりませんでしたがそれでもこの値段となっております。ダンジョン発見に繋がる情報に対する報酬ですが、今後得られる収益を考えれば少ないくらいですが、規定限度一杯の報酬をお渡ししています。特にこの国にはダンジョンはありませんでしたからそこから得られる収入の期待は高いんですよ。」
「そ、そうですか……。」
よく分かんないけど、そういう事らしいです。
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