第1267話 後1時間で本番か…。的なお話
ラーメンを食べ終わったので容器は返品する。
こっちの世界だと地球みたいに簡単に捨てられる容器を大量生産するなんて真似は出来ないので返却する必要がある。
でも、環境問題を考えると簡単に捨てられるよりかはこうして返却できるしっかりとした容器の方がいいとは思う。
客としては屋台のそばに居る必要か無くなるから捨てられる方が楽ではあるけど。
「それじゃあ俺達はこれで。」
「おう。また今度な。」
「はい。」
ヨージさんに軽く声をかけて別れた後、再びぶらぶらと。
射的や玉入れといった遊戯系に自作の商品を売っているクラフト系……でいいのかな?
まあ、とにかく色々だ。
色々な屋台を巡っているとあっという間に時間が経ってしまい気付けば5時過ぎ。
楽しい時間ってなんでこんなに早く過ぎてしまうんだろうな?
「さてと、そろそろ会場の方に向かわないとな。」
「そうだね。楽しみにしてるよ、レント。」
「うっ! プレッシャーになるようなこと言うなよなぁ。」
「あ、ごめん。」
「まあ、どのみちやるしかないんだけどさ。でも、やっぱり本番だけあって初日以上に緊張するなぁ。逃げちゃダメかな?」
「だ、ダメに決まっておるではないか!」
「軽い冗談だから本気にするなって。」
「脅かすな。全く……。」
半分くらいは本気だったりするけどね。
いや本当に、大勢の人が見てる前でやるってのは予想以上に緊張するもんなんだよ。
こういう時はやはりあれだよな。
かぼちゃに人って書いて飲み込めばいいんだよな?
あれ?
手のひらにかぼちゃだっけ?
「それじゃあレント、頑張ってね。」
「応援してます!」
「失敗しても気にしないでいいからね。」
「ま、適当に頑張んなさい。」
「最前列で観てるからね。」
「録画しておく。」
それぞれからそれぞれの応援を聞き俺は控えし……ちょっと待って。
録画?
今録画って言った?
「ちょぉーっとリリンさんや。今なんて言ったのかな?」
「録画する。」
「録画? いやいや、どうやって録画なんてするんだよ。撮影機材なんて無いだろ。無いよな? 無いと言ってくれ。お願いだから。」
「アリシアに預かった。忙しくて見れないから、撮ってくれと。」
「マジかよ……。」
「録画データは後でくれるって。」
「マジかよ……。」
やめてくれと言ったところでどうにもならないなこれ。
だって相手神様だもん。
アリシアさんだもん。
俺だって同じように頼まれれば多分断れない。
色々お世話になってるし断るという選択肢自体無いだろう。
でもなぁ、録画されるのかぁ……。
緊張する理由が一つ増えちゃったよ。
逃げたいなぁ。
でも逃げれないよなぁ。
あーもー。
アリシアさんが後で見るんだ。
ここで無様な姿は見せられないぞ。
腹を括れ!
覚悟を決めろ!
ーーパァンッ!
自分に喝を入れるため、気合を入れるため、自分の頬を両手で叩く。
これ自体にはなんの意味もない。
でも、それでもワンアクションを入れることで気持ちを切り替える。
そんな願いを込めて行う。
「よし。行ってくる!」
みんなに声をかけて俺は控え室へと向かった。
キリハさん、ヒサギさん、アルフレッドは来ていたようで俺が最後だった。
「調子はどうですか? どこか悪いとかはありませんよね?」
「大丈夫です。そういうキリハさんはどうですか? 緊張してませんか?」
「緊張はしてます。今だって手が少し震えてますし……でも、大丈夫です!」
「そうですか。ヒサギさんはどうですか?」
「やるだけのことはやった。後は、どのみち頑張るだけだ。」
「そうですね。」
「アルフレッドは……今日は出番ないから聞かなくて大丈夫か。」
「おい!」
軽く笑いが起こる。
緊張をほぐすためのちょっとした冗談だということは分かっているんだろう。
だから必要以上に怒ることはなく、そのまま話は終わりそれぞれの衣装へと着替えるために控え室へと向かう。
後1時間で本番か……。
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