第1259話 君の勇姿は見ていなかった。的なお話
さてさて、準々決勝との事だけど、どのくらいの人がいるのかな?
冒険者ランクがS以上の人は出ないだろうけど、それでもAランクの人くらい居るだろう。
Aランクは目指すところでもあるし、それがどの程度の強さなのか実際に見れるのはありがたい。
Aランクになって、しばらく経ってもアデルにそういう話がなければ結婚って約束だからな。
まあ、今更手放す気なんてないけど、外聞とかもあるから一応ね。
『準々決勝第一試合、東から入場するは今年初参戦、予選、本戦と破竹の勢いで強敵たちを撃破してきた期待の新星、ケンターー!! 対するは西から入場する槍聖ガラード! 北方大陸において最強の槍使いとの噂は伊達ではない! 一回戦でのシード枠のゴンザエモンを圧倒した実力は凄まじく一躍有名人に! そんな2人が激突します!』
北方大陸か。
寒そうだなと思うけど、この世界は地球ではなく異世界だ。
なんか季節を司る精霊とかも居るらしいし北にあるからといって必ずしも寒いとは限らない。
龍脈の力を使った大規模結界で気象を温暖に保ってるなんて事があるかもしれない。
『それでは、試合開始ー!!』
お、試合が始まった。
ケンタとかいう人は剣を使っている。
見た目は刀に似てるけど、実態はただの刀状の片刃の剣なんだろうな。
対するは北方大陸最強の槍使いなんて言われてる通りに槍を使っている。
ただし、どちらも刃引きしてたり先端が丸めてある。
祭りの催し物で人死にが出るのは流石にまずいしその辺の対策だろう。
でも、刃引きしてあろうともそれは金属の塊であるのは間違いなく、それで思いっきり打たれればかなりのダメージだろうし、頭に食らえば下手したら死んでしまうだろう。
寸止め試合ってわけでもなさそうだし、よくやるなぁって思ってしまうのは俺が甘いのかもしれない。
実際訓練とかしてても俺達は寸止めでしかやってないし。
一応理由としては危険な目に合わせたくないっていうのと、そもそも回避を前提としているから一撃喰らうような状況はそれ自体が負けとして扱っているから。
毒持ちの魔物とかの攻撃を喰らえばそれだけで危険。
それはこの前の鵺戦でも実感したし、それ以外でも怪我をするだけでそれだけで危険に陥ってしまう。
手を怪我すれば武器を持てなくなるし、足を怪我すれば回避や逃走が難しくなる。
小さな傷でも痛みが集中力を妨げるし、沢山傷が出来れば出血量も増えて死に至る可能性も出てくるだろう。
だから回避を重要視している。
しかし、それでも躱しきれずに攻撃を受けてしまう事だってあるだろうし、そのいざという時に痛みで動きが鈍るなんて事がないように痛みになれる訓練とかした方がいいのかな?
いや、慣れるまでいくのは流石に危険な気がする。
痛みに慣れれば多少の怪我で動じる事はなくなるだろうけど、逆に言えば多少の怪我を覚悟しての特攻なんてするようになってしまうかもしれない。
それが必要になる瞬間はあるかもしれないけど、しなくていい時にまでして結果死んだら目も当てられないだろう。
そう考えたら慣れる訓練は必要ないかな。
死に、痛みに臆病だからこそ、生き残れる。
そんな気がする。
『決ぃまったぁぁぁぁぁぁ!!! 勝ったのは、槍聖ガラァァァドォォォォォ!!!』
あ、考えごとしてたせいで見逃した。
……ま、まあ、槍聖さんの試合はまだあるから……。
ごめんよケンタ君。
君の勇姿は見ていなかった。
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