第1234話 どうするかは斬葉次第ですね。的なお話

〜斬華視点〜


斬葉は演舞における詠唱と祝詞を読み間違える事なく無事に終わらせられたみたいでホッとしました。

その代わりなのかは分かりませんが、此度の英雄役はミスをしていましたね。

とはいえ、それも仕方ないでしょう。

外から来た者にとってはヤマト服は着慣れない物でしょうし、ましてや英雄役の衣装ともなると煌びやかさを意識している為に重く動き辛くなってしまい、結果先程のように転んでしまうのも致し方ない。

むしろあれだけ動ける方がおかしいでしょう。

となれば、あの噂も本当なのでしょうね。

試験官を一撃で倒したという噂は。


あの試験を担当した者は今でこそ一線を退いたものの未だその名が知れ渡っている実力者。

それを試験とはいえ一撃で倒したのだから驚きです。

我が龍牙峰家に欲しい人材ですね。

家では斬葉も彼の事をよく話しているし、可能性もなくはないでしょう。


他の高位大名達の面会は済んだようですね。

ではそろそろ参りましょうか。



「初めまして。リュウガミネ三等大名家当主をしております、龍牙峰・斬華と申します。レントさんには娘がお世話になっているそうで。」


まずは軽い挨拶をと思ったのですが、何やら驚いています。


「あの、何か……?」

「あ、すみません。これまでの大名様は全て男性の方でしたので女性の大名様も居るのだと少し驚いてしまいました。」

「ああ、成程。確かにあまり居ませんし驚くのも当然ですね。」


女性大名は珍しい。

その中でも我が龍牙峰家は特に珍しい。

他の大名家であれば嫡男が生まれないか、娘の方が優秀だった場合に大名位を継ぐことがある。

それでも大抵の場合は男が継ぐ。

それに対して我が龍牙峰は初代の言いつけにより女性が当主となることを推奨している。

初代曰く『龍牙峰の華は戦場にて咲き誇り、帝様に仇なすものを斬り裂く一輪の華であれ』との事。

女性だからこそどんな時でも帝様の側に居られる。

女性だからこそ出来る事があると、初代はそう考えて言いつけたのだろう。


「そちらの方はヒサギさん……でしたね。」

「はっ、その通りであります。」

「演舞、お見事でした。これならば3日目の演舞も安心して見てられますね。」

「ありがとうございます。」

「斬葉も、失敗する事なく演じたのは良かったですよ。」

「本番でも失敗しないよう、しっかりと励みます。」

「レントさんは少し失敗していましたね。ですが、すぐに立て直したのは良かったですね。」

「ありがとうございます。」

「本当はもっと話していたいのですが、あまり長居しても他の方の迷惑になるでしょう。レントさん、封竜祭が終わり落ち着いてからでいいので一度我が家にいらしてください。娘もきっと喜びますので。」

「ありがとうございます。必ず伺わせていただきます。」

「お待ちしておりますよ。」


これで少しは仲が進展すると良いのですが。

娘が言うにはレントさんは帝様と親しいようですし、必ず捕まえなくては。

帝様と親しい立場は得難いものですし、他の大名に取られる前に是非とも確保したい所。

幸い娘もレントさんの事を憎からず想っているようですし、結婚とまでは行かなくとも婚約までは済ませてしまいたいですね。

レントさんはヤマトとは縁もゆかりも無いので斬葉の名はカナエに譲る事になるかもしれませんが、カナエと婚約させるという手もあるので、どうするかは斬葉次第ですね。

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