第1218話 やっぱり心配するんだろうな。的なお話
〜セフィア視点〜
レントが稽古を始めてから2週間が経った。
最初の頃は不安だったみたいだけど、最近では同じ演者の人達とも仲良くやっているみたいで毎日楽しそうにしてる。
以前連れて来たキリハさんも、お酒に酔って潰れるなんて事はあの時だけみたい。
ちょっと残念。
また来てくれるといいんだけど、難しいかな?
でも、ユキノちゃんの幼馴染みだって言っていたし可能性はある。
その時は、真意を確かめようかな。
「それじゃあ、行ってくる。」
「うん。行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃい。」
「お兄さん、頑張って来てくださいね。」
「おう。」
今日もレントは稽古に出かけたし、それじゃあ僕達も出かける準備をしようかな。
今日もやって来た冒険者ギルド。
レントが稽古を頑張っているのに僕達だけのんびり宿で過ごすのもなんか申し訳なかったから、みんなで仕事をする事にした。
ただ、その事をレントに話したら凄い心配された。
僕達が可愛すぎるから変な男に絡まれないか心配って……ふふっ。
全くレントってば、心配性なんだから。
でも、レントは気付いているのかな?
その心配する相手の中に、ユキノちゃんやユウキちゃんも含まれていることに。
これは、そう遠くないうちに2人も……うん。
楽しみだ。
「やっぱり今日も街道の見回り?」
「うん。今の時期はこの仕事が定番みたいだからね。」
「でもこうもずっと続けてると飽きて来るわよ。」
「じゃあ、別のにする?」
「別のね〜……。」
ユウキちゃんは他の依頼を見ていくけど、目に付くのはお店の手伝いとか、屋台の製作の手伝いとか、お祭り前に従業員を休ませるからその代わりに店番をするとか、そういう雑用の仕事ばかり目立つ。
今の時期を考えれば仕方ないとは思うけど。
「これなんてどうかな? 両親と妻と娘をヒノモトに連れて来て欲しいっていうの。近くの村だから日帰りで行けそうだし。」
「護衛か……うーん、まあいいか。」
「じゃあ、これで決まりだね。」
依頼を受理してもらった後、まずは依頼者に会いに行く。
依頼者はヒノモトに出稼ぎに来ているみたい。
「ここが依頼書にあった魔道具店だね。」
「いらっしゃい。何をお探しで。」
「冒険者ギルドで依頼を受けました、【紅玉の絆】です。モヘイさんは居ますか?」
「ああ、話は聞いているよ。ちょっと待ってくれ。今呼んでくる。」
お店の人が奥に引っ込むとモヘイと名前を呼ぶ声が聴こてえくる。
そしてやって来た店の人は30歳くらいの人を連れて来た。
この人が依頼主のモヘイさんか。
「君達が依頼を受けてくれたんだってね。ありがとう。普段なら自分が村に帰るだけでいいんだけど、今年は祭りだろ? だから一緒に回りたいんだ。」
「そうなんですね。それで、家の場所と奥様と娘さんの特徴を教えてくれませんか?」
「ああ、妻と娘は2人とも人族で髪の色は赤。名前は妻がツバキで娘がモミジ。場所は村に入ってすぐのところに宿屋があって、その宿屋の5軒隣の黒い瓦屋根の家が俺の家だ。家の戸の所にツバキの花の飾りがあるからすぐに分かるはずだ。」
「宿屋の5軒隣の家ですね。」
「そうだ。後これを。妻に宛てた手紙だ。これを出せば俺が依頼を出した事が分かるだろう。」
「分かりました。では、今から行って来ますね。」
「頼む。」
手紙はユキノちゃんに持ってもらい、僕達は護衛対象のいる村に向かう。
それにしても、あのモヘイさん、ちょっとだけレントに似てたね。
顔とかは断然レントの方がカッコいいんだけど、奥さんと娘さんを心配する姿とか、僕達が全員女だと知った時の安心した顔が、僕達を心配しているレントの顔と重なる。
いつか子供が出来た時、レントもやっぱり心配するんだろうな。
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