第1200話 やっぱりこれ微妙だわ。的なお話

3階に上がってすぐの所に大きな看板のような物が掲示されていて、それを見るにどうやら3階の展示品は海外……つまりはヤマトの外の、俺達がいた西方大陸、そして北方大陸、東方大陸、南方大陸の品が展示されているみたいだ。

西方大陸の物は勿論のこと、他の大陸の美術品も見たことないし、ちょっと興味があるな。


最初は北方大陸のようだな。

北方大陸という名前から寒い地域とイメージしがちだが、実際はそうでもないらしい。

地球のように自転の軸と太陽の当たる角度、公転の関係とかで季節や温暖差が決まるわけではなく、精霊とか魔法とかがあるから実際はそれほど酷いわけじゃないらしい。

まあ、冬場はかなりきついし、北方大陸も北の方は流石に寒いみたいだけど。


同様に南方大陸もそこまで暑くない。

というか、南だから熱いってのは偏見で、赤道との距離によって変わるから南でも下に行き過ぎれば寒い。

南極とかな。


「あ、装飾品だ。そういえばヤマトの方ではこういうのは全然置いてなかったね。」

「言われてみれば……。無かったわけではないけど、ほんの数点って感じだったな。」


ヤマトは質実剛健っていうか、装飾品で飾るよりも日用品なんかで美を表現するのが主流だったのかな?

置いてあった装飾品も派手さはなく実用性重視って感じだったし。


北方大陸の美術品は絵画や彫刻、そして装飾品が多数となっている。

それは西方大陸、南方大陸、東方大陸も同様。

これではまるでヤマト以外の大陸は派手なのが好きなように見えるではないか。

実際にそうなのかもしれないが、それでも一応理由はあると思う。


うーんと……これまでのを見るに食器や花瓶といった陶器類は1つもなかったな。

そこから考えられるのは、輸送の際に船を使う必要があり、天候によっては大きく揺れることもあるだろうから、割れやすい陶器類は積み込むことはなく、装飾品なんかはサイズの関係で多く運ぶことが出来たから多く展示されている……とか?

そう考えれば納得がいくな。

って、この世界にはマジックバッグとかあるじゃないか。

ならこの考えはハズレだな。

装飾品が多いのは煌びやかで見ただけで高いことが分かるからか?

考えてても仕方ないか。

それよりも展示品を見て楽しもう。


同じ絵画や彫刻というジャンルでも大陸は勿論、国によっても流行り廃りや傾向なんかが違ってて、その辺が面白い。

東方大陸はなんていうか、色彩が鮮やかというか艶やかというか……ヴィヴィッドな感じ?

原色が強い感じだ。

南方大陸は油絵っぽい質感が特徴で、西方大陸は線が細かくて繊細な感じがする。

北方大陸は人物画や静物画よりも風景画が多いな。


「あ、終わりか。」


最後に大きな絵画で3階の展示品は終わりだった。

その大きな絵画はなんていうか、微妙な感じだったけど。

題材がアリシアさんなのは、まあ神様だしそういうのもあって当然だとは思う。

思うけど、出来が微妙なんだ。

アリシアさんの髪は透き通るような金色であって、派手な金色じゃないんだよ。

髪の長さも本物よりも少し長いし、顔も違う。

本物のアリシアさんを見れる人なんてそうそういないだろうから、本物と違うなんていうのは仕方ないかもしれないが、それでも感想としては微妙と言わざるを得ないだろう。


「なんか、微妙だね。」

「ん。微妙。」

「そうですね。本物を知っているとどうしても違和感がありますよね。」

「あんまり大きな声ではいえないけどね。」

「ここ美術館だもんね。」

「いや、そうだけど、そういうことじゃなくて……。」

「冗談に決まってるじゃない。あまり大っぴらに言うことじゃないって事でしょ。分かってるわよ、そんなことくらい。」


みんなも微妙だと感じだようだ。

絵は上手いんだけど、モチーフのこれじゃない感が強くて結果微妙と感じてしまうんだよな。


最上階である4階に向かう前に最後にもう1度見る。

うん。

やっぱりこれ微妙だわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る