第1103話 意外と近くまで来てて驚いた。的なお話

スズランさんのいる部屋に向かい、ノックをする。

親しき仲にも礼儀ありというが、まだそこまで親しくなっていない相手ならば尚の事。

こういう事はしっかりとやるべきだと思う。

妙に馴れ馴れしい奴とかいるけど、あれ受ける方は絶対なんだこいつ? って思ってるよ。

気さくで親しみやすい奴でいつの間にか仲良くなるっていうケースももちろんあるだろうが、中には人格面で問題のある奴なんかもいるだろう。

俺はそういう風にはなりたくない。

だから、ちゃんとこうしてノックをしたわけだけど、なんか反応無いな?


「風見、多分隣の部屋に全員いると思う。」

「あ、そう。」


スズランさん達、不在でした。

そりゃ反応無いわ。


というわけで、改めて部屋をノックする。

今度はちゃんと隣の部屋で、中に人がいるのは蒼井が確認している。

なので、すぐに戸が開けられる。


「レント、よく来た。入って。」


部屋は4人が寛げるようにそれなりに広くなっている。

ベッドなんかも普通にあるけど、このヤマトでは基本布団だ。

この部屋もそのようで、既に食べ終わった夕食の食器は片付けられて部屋には布団が敷き詰められている。

ちなみに何故か俺達の部屋は布団ではなくベッドだった。

離れていた理由はそれかもしれないな。


「それにしても、こっちにスズランさんがいるとは思わなかった。隣の部屋をノックしても反応が無かった時は驚いたよ。」

「ん。護衛するならどちらかの部屋に集まった方がいい。そして、集まるなら少しでもレント達に近い方がいいから。」

「なるほどな。」


近いと言っても1部屋分だ。

そう変わらない。

そう変わらないが、逼迫した状況ならその1部屋分が明暗を分けるという事もあり得る。

ならばその1部屋分を確保するのは護衛をしている身として正しい選択だろう。


「意図したわけじゃ無いが、結局全員が集まったな。」


車座の状態となり話をする。

4人部屋でそれなりには広いとはいえ、それでも12人も集まれば少し狭く感じるな。


「それで、そちらは何の要件でしょうか?」

「大したことじゃないが、何か気になる事とか無かったのかの確認だな。後はちょっとした雑談。」

「気になる事……特にありませんわ。」

「ん。こっちも何もない。」

「そうだな。風呂でルナの1部分が執拗に見られた以外は何も無かった。」

「は? いやだって、幻覚は?」

「お、お風呂だし、余計な力は、使うべきじゃ、ないと思って、それで解いてたら、そしたら、いろんな人に見られて……。」

「そいつは災難だったな……。」


最近では成長もだいぶ落ち着いてきたとはいえ、未だに成長を続けるマジカルおっぱいだ。

その柔らかさは正しく極上で同性であろうと注目を集めてしまうのも仕方ないか。

多分装備の無い無防備な時間だからこそ、手札を増やすために幻覚を解除したんだろう。


「まあ、大丈夫そうならよかった。もちろんこっちも今の所は異常なしだ。夜も何かあった時は頼むぞ。」

「ん。」

「任せておけ。」

「確認はそれだけかしら?」

「まあ、そうですね。あとは不満点があればだけど、その様子だと問題なさそうですね。」

「今の所は問題ないけど、強いて言えば、あなたとの交流が少ない事ですかね。折角、英雄候補となる人と一緒に行動しているのに、全然話せてないじゃない! これじゃあ、ゼロから始める英雄候補伝が書けないじゃないの!」

「いつの間にタイトルまで……。というか、その話は断りましたよね!?」

「ええ、ですが個人的に楽しむなら問題はありませんから!」

「売らなくてもそんなのがあるだけで嫌ですよ!?」

「それで、雑談は何が聞きたいのかしら?」

「露骨に話逸らした!?」

「それは気のせいよ。それよりも、何が聞きたいのかしら?」

「えーと、それじゃあ1つ目ですけど、京までは後どのくらいで着きそうですかね?」

「明日の夕方ごろね。」

「明日!?」


もうちょいかかると思ってたけど、意外と近くまで来てて驚いた。

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