第1090話 最悪の結果にはなってなくて本当によかった。的なお話

強敵を倒した事を喜んだ後はさっさと撤収準備。

鵺が無駄に大きな音を立ててたりしたから魔物がひょっこり顔を出すかもしれないしね〜。

そんな簡単に釣られるような魔物ならなんの問題もないけど面倒だから。

こちとら一応大怪我をした身だし、そんなのを相手にする気力はない。


「ユキノー、鵺って何かに使えたりする?」

「ん? 傷が少なければ剥製にでもなっていたんだろうが……どうなんだろうな? そもそもそう簡単に倒せる相手ではないから情報自体少なくてな。まあ、何かしら使えるだろうよ。素材にならなくても国の研究機関が欲しがったり、他国で珍しさに売れたりな。」

「それもそうだな。」


まあ、流石に無価値だと思ってないけど念の為に聞いておこうかなって。

とりあえずどうするにしてもストレージの中に放り込んでおけばいいだろう。

そういえば、何か忘れてるような気がする……なんかこう、ストレージにしまいっぱなしな……気のせいかな?

なんでもどれだけでも入るからとりあえず放り込んどけーってなっちゃうのがねー。

便利なんだけど、忘れたりしちゃうんだよね。


鵺を仕舞ったら次は……この場所の整備、かな?

そう考えて辺りを見回す。

いつの間にか黒い煙は消えているが、消えているからこそよりはっきりと見る事が出来てしまうというか……。

なんていうか、やり過ぎた。

至る所に土の壁がせり立っててどう考えてもこれじゃあ馬車は通れないだろうし、セフィアのネフィリムアームによって陥没した地面に、アヴニールの能力で噴き出た炎によって穴が空きその周囲が溶け固まっていたりする。

そして極めつけが、飛閃・煌牙によって数十メートルに渡って走っている地面の亀裂。

亀裂の縁は焼け焦げ、溶け固まっている。


こんなの、放置なんて出来るわけがない。

だって周りに大迷惑だもん!

もしも漫画なら今絶対俺白目で表現されてる自信ある。

そういう描写をされる心境だし。


「まずは土壁を崩すか……。結局これら使う事なかったな。」

「使わないに越した事ないんだけど、確かにちょっと残念かも。」


セフィアには亀裂の修復という大仕事が待っているのであまり魔力を使わせないように、土壁を叩き壊していく。

しかし、もともと防御用の壁として作ったからかなりの強度があり崩すのも一苦労。

そんな中意外な活躍を見せたのが、全く役に立たないと思っていた2つ。

ストレージの肥やしになっていた伸びてしなるハンマー『剛伸槌』。

そして巨大ヤスリこと『フレグランス』。


巨大ヤスリの方は削る事が出来るけど、元々の目的はメイスとしての打撃武器だ。

それだけの強度や威力はちゃんとあるので、メイスとして使うだけで結構活躍してる。

意外と活躍の場があるのには驚きだが、実はちゃんとした戦闘ではまだ1度も使ってない。

その辺が残念な証拠なんだけど。


その巨大ヤスリよりも活躍したのが剛伸槌。

伸びてしなるので非常に使い辛いとはいっても相手は動かぬ壁だ。

多少ズレようとも大きいので問題なく当たる。

当たりさえすれば俺の目論見通り遠心力としなりによる強烈な一撃が炸裂するので、作業が捗る捗る。


それでもそこそこの数の土壁があるから少しばかり時間がかかっちゃったけどね。

全ての土壁を崩し終え、残るは穴と陥没と亀裂か。

修理の材料としてさっきの土壁の瓦礫が使えるのでそれらをザラザラと注いでセフィアが固める。


陥没と穴はそれで塞がり後は亀裂だけだという所で分かれていたみんなが馬車に乗ってやって来た。

何かあったのかな?


「レント達大丈夫……って何よこれ!?」


直す前だった亀裂を見て驚かれた。

まあ、確かに見た目はすごいからね……。

とはいえ、6人とも何事もなく無事なようで安心した。

どうやらあの3人組はただのトレインだったようだ。

いや、ただのって言い方もどうかと思うけど、何はともあれ、最悪の結果にはなってなくて本当によかった。

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