第1089話 なんなんだろうね、この空気。的なお話
意識を集中させる。
さっさと倒すにしても、鵺のあの雷は厄介だ。
剣をアースにして大半を逃したとはいえ、それでも抵抗熱やこっちに流れて来た僅かな電気でも焼け爛れる程の電力。
この剣の伝導率がどうなのかは分からないけど、まともに斬りかかっても雷で返り討ちに遭うだけだろう。
ひょっとしたらそれを察知してユキノは飛び道具に頼っていたのかもしれないな。
だが、それでは決定打にはなり得ないだろう。
そして、それに対する俺の答えが……これだ。
「1分半を切ったって所か。」
剣が熱くなって電気が流れるのなら触れなければいい。
まあ、本当に魔力障壁で防げるかは分からないがな。
「オラァッ!」
一気に接近して、剣を振り下ろすが躱される。
「まだまだぁ!」
斬る、躱される、斬る、躱される、斬る、躱される、斬る、躱される。
ちっ!
やっぱり呪いが響いていやがる……本来ならば捉えられない速さじゃないのにワンテンポ遅れてしまう。
なら……。
「我が身に宿る魔力よ、我を鎧い、疾風成る脚力と粉砕せしめる力を! 時間指定、300秒。身体強化・速・撃!」
速さと攻撃力。
防御に関しては考えてない。
もう当たる気はないからな。
当たらなければどうということはない。
「せりゃ!」
突然スピードが上がったからか対応しきれずに一太刀浴びせる事に成功。
うん。
雷が手に伝ってくることもなさそうだ。
というわけでこのまま攻めていく。
「やっ! はっ! せいっ!」
一太刀浴びたからか、鵺は先程よりもより大きく距離を取り始める。
防御力か、あるいは苦痛に対する精神耐性が低いのか、それは分からないが攻撃を必要以上に警戒している。
非常にありがたい。
「そこだぁっ! 火噴け!」
俺の振り下ろしを大きく横に避けた瞬間を狙い、退路を塞ぐようにしてアヴニールの能力を使う。
突然地面から噴き出した炎の奔流を見て一瞬硬直する。
その隙を見逃すはずもなく追撃をかけてこれまでで1番のダメージを与える。
「グガァァァァァ!」
破れかぶれの爪による攻撃を剣を使って受け流して体勢を崩させ、そのままの流れで剣を突き入れる。
「ギャアアアアアア!!」
深々といった。
かなりの深傷で、命の危機を感じ取ったのか脇目も降らず逃げ出した。
「させないよ!」
セフィアのネフィリムアームが逃げ出した鵺の目の前に落ちる。
それによって急ブレーキをかけた所に……
「隔離世の誘い手!」
「シャドウオブデスピアーズ!」
ユキノの魔法は地面から黒い手がたくさん出てきてそれによって鵺は押さえつけられ、そこにルナの13本の漆黒の杭が殺到し、動きを完全に封じる。
「今だ!」
「やって。」
「レント!」
「おう! トドメだ! 飛閃・煌牙!」
魔力障壁を解除し、真紅の閃光で斬り裂く。
生憎と、魔力障壁と並列して使える程の器用さは持ち合わせていないんでね。
この機会を逃せば魔力障壁を張る時間が無いだろうし、もうじき強化魔法も切れる。
だからここで確実に決める為に、必殺の一撃で倒した。
だけどまあ……やり過ぎたなぁ。
前みたいにぶっ倒れるわけにもいかないからある程度加減したとはいえ、それでも数十メートル先まで地面には亀裂が走ってる。
やっぱり、この技は余程の事が無い限り封印した方が良さそうだ……。
「あの、私の出番は……?」
「あ! え、えーと……あの、セフィアの護衛ありがとね。お陰で安心して戦えた、よ?」
「いえ、それくらいは当然です。当然ですが……やっぱり戦いたかったです。」
「あ、うん、そうなんだ。なんか、ごめんね。」
俺が最初に大怪我をした以外は何事もなく無事に終わってめでたしめでたしってはずだったんだけど、なんなんだろうね、この空気。
とりあえずはあれだ。
強敵を倒せたんだし、今は喜んでおこう。
やったー?
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