第980話 今はこれだけ言わせてくれ…。的なお話

「あー、これご飯が欲しくなる〜。」

「確かに。そもそもウナギは単体で食べたりしないものね。」


そして米が欲しくなったのは俺だけではないようで蒼井とアカネも欲しそうにしている。


「ふむ……少し味付けが濃いな。それに少々硬い……種類が違うのか、それても焼き方か?」


ユキノはユキノでウナギの分析をしている。

この反応を見るにどうやらヤマトでもウナギは食べられているようだ。

それも、蒲焼きという形で。

日本に似た発展をしたのか、それとも転移者転生者が伝えたのかは分からないけど、蒲焼きがあるのは嬉しい話だ。

うなぎのゼリー煮とかいう料理もあるらしいけどそれは激マズだって噂だし、そういう発展をしていなくて本当に良かった。


「確かにこれちょっと味濃いかも。これ単体だとクドくなってくるね。」

「でも癖になる味だろ?」

「そうだね。」

「これは熱々のご飯に乗せて食うのが最高なんだ。だから蒼井も言っていたわけだ。」

「そうなんだ。」


本当に、ご飯が欲しい……。

ここにいると余計にご飯が欲しくなるし次に行こう。


「それじゃ次の場所を案内してもらおうかな。」

「……え、あ、うん。分かった。じゃあこっちだ。」

「あ、その前に……。」

「何?」

「タレ、口の周りについてるぞ。」


結構べったりついてたから手拭いで拭いてあげる。

俺妹しか居なかったけど、弟がいたらこんな感じなのかな?


次に案内された場所は街の広場。

まだお昼には程遠い時間帯だが、結構な喧騒に包まれている。

この喧騒はお昼頃になるとより大きくなったりするんだろうな。


「ここには何があるのかな?」

「ここは街の中心だから大体のものがあるぜ。美味い店もそうでない店も、面白い店も、便利な店も、本当にいろいろな。お兄さん達はどこか行きたい所とかある?」

「そうだなぁ……まずは便利な店ってのかな。」

「分かった。便利な店だな。」

「お願いね。所で、便利な店って具体的にはどう便利なのかな?」

「それは行ってからのお楽しみってね。」


そうして少年は人混みを抜けて進んでいくが、気付けば裏路地の方に入っていった。

この瞬間、宿の従業員の人に言われたことが頭を過ぎるがまだ何かされたわけじゃないから意識しないように気をつける。

でも場所が場所なので注意は必要だな。

ウチのメンバーはみんなかわいいから。


少年の後をついて行くが少年は迷いなく進んでいき、裏路地に入ってから10分程歩いていくと少年は一軒の家屋の前で立ち止まった。


「ここが便利な店だぜ。」

「一見すると普通の家屋に見えるんだけど本当に店なの?」

「まあ、入ってみれば分かるって。親方いるー?」

「うるせーぞ! 今何時だと思ってやがる!」

「もうとっくに朝だよ!」

「ったく……で、今日は何の用だ? また何か壊れたのか?」

「違う違う。仕事で街案内してるんだ。」


少年とやりとりをする親方と呼ばれた人。

親方という呼ばれ方と何か壊れたのか? というセリフから、多分物作り系での意味で便利な店なのだろう。

それは別にいい。

確かに色々な物を作ってくれるなり、直してくれるなりしてくれるのは便利だし非常に助かるだろう。

だけど、今はこれだけ言わせてくれ……。


「まずは服を着てください!!」


親方と呼ばれた人は……パンツ一丁の女性だった。

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