第972話 みんなは眠いだろうしさ。的なお話
う〜ん。
何もない!
特筆すべき事が本当に無いや。
周囲にあるのはどこまであるのか分からない森とアクリアに続く街道のみ。
こうも代わり映えがないと飽きが来るというか、盗賊の件があったもんだから眠くて眠くて……。
「ふわ……はぁ〜……眠っ……。」
あくびが止まらない。
何も無いしもういっそのこと移動は全部アルバとマロンに任せて寝てしまおうか……。
この2頭ならきっと街道通りに進んでくれるだろう。
何も無さ過ぎて、眠過ぎてアホな事を考えている気がする……。
◇
「ヒヒィン!」
「はっ!」
え、何?
あれ?
ひょっとして俺、今寝てた?
ってあれ?
馬車止まってる?
なんで?
うわ……アルバがマロンの馬車と繋いでいるところ外そうとしてる!
凄っ!
ってそうじゃなくて、なんで突然そんな事を!?
「レント、いつまで御者席に座ってるの? 休憩しないの?」
「え、あ、うん。今降りるよ。」
どうやらそういう事らしい。
俺が何も無さ過ぎてつい寝てしまっていたけど、その間もアルバとマロンは馬車馬にあるまじき知性を発揮して馬車を引いていき、そして休憩する時間になったからと馬車を停止させてお互いの装着具を外し、その上で寝こけていた俺を鳴いて起こした、と。
……ウチの子達ヤバくね?
馬は頭のいい動物というのはよく聞くけど、本当に頭良すぎじゃない?
というか絶対ここまで頭良く無いよね?
……深く考えるのはよそう。
俺は何も見なかった。
何も知らなかった。
それがいい。
とりあえずあれだね。
生命の神秘って凄いね。
休憩を終えて再びの移動だが、1度やってしまうともう1度と考えてしまう。
具体的には、この手綱を手放してみたいと考えてしまう。
今はまだ起きてるし離す必要はどこにも無いんだけど……よ、よし。
離すぞ。
ドキドキするなぁ……。
「おぉ……。」
離してみたが、普通に走ってる……。
街道が真っ直ぐだからなんとかなってるだけなのかもしれないけど、それでも凄いなぁ。
あ、岩が。
このままだと馬車がぶつかりそう。
そう思っていたが、アルバとマロンはちゃんと横に移動して避けてくれ、岩を超えるとまた中央へと戻ってくれる。
うわぁ……本当に自分達でやってくれてるよ。
ウチの馬車、かなりデカいからちゃんと考えてないと躱しきれないんだけど、しっかりと回避してくれてるよ。
これなら寝ていても問題なさそうだね。
まあ、やらないけど。
流石にそれは怖すぎるし。
何はともあれ、後でちゃんと褒めておかないとな。
この後、何度か休憩を挟みお昼を食べて狩りの時間へ。
狩りの時間は特に珍しい事はなく……あ、いや、初見の魔物が居たな。
スチームフロッグとかいうおっきなカエルで、特徴的なのは名前にもある通りのスチーム機能。
耳の後ろの所に蒸気を噴き出している穴があって、その蒸気の勢いが増す毎に身体能力が上昇していた。
後は口から高温の蒸気を吐き出してきてそれが結構キツかった。
熱さはもちろんだけど、何よりも生臭くって……。
最終的には遠距離から焼き殺したよ。
そんなこんながありつつ狩りの時間は終了。
戦果としてはスチームフロッグにクマさんにイノシシさん、コボさんの小集団にゴブさんの小集団となった。
後はもう少し移動して、そのまま野営かな。
俺は寝ちゃったからいいとしても、みんなは眠いだろうしさ。
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