第958話 本当にもう、勘弁してくれ。的なお話
さっきの2人は徒歩だったし多分そうなるだろうとは思っていたが、あっという間に街に着きました。
今回も門番さんに街について教えてもらいました。
さっきの日本人っぽい人が言っていた通りこの町の名前はエルベルトで、ディスフォード辺境伯領の領都。
海洋国家アクリアと隣接している関係で魚介系の料理が売りだとか。
まあ、その魚介系も干されてるか凍ってるかのどちらかだそうで、その分の人件費に関税その他諸々がかかって結構いいお値段なんだそうだが。
凍ってるのは魔道具を使用しているために干してる奴よりも尚高いそうで、高級なお店とかでしか扱ってないとも。
後は迷宮都市のお隣ということもあって魔道具作りが盛んで色々な魔道具があるそうだ。
俺達はその迷宮都市から来たからそれが魅力的に映るかといえばそうではないが。
まあ、この辺はただの前座だ。
アクリア経由でヤマトから僅かながら輸入しているものがあるそうだ。
そう、米である。
日本人の心、日本人の魂、米!
絶対に買い占めてやる!
「おっちゃん! 米はどこで売ってるんだ!?」
「お、おっちゃん!?」
「ぷっ! くくっ……おっちゃんだとよ。米ならマハーデルって八百屋が取り扱ってるよ。といっても、かなり高くて一部の好事家が買うくらいだからそんなに多くはないぞ。」
「ありがとうおっさん!」
「お、おっさんって俺もかよ!?」
門番のおっちゃんとおっさんが何か言ってるが、そんなのはどうでもいい。
大事なのは米だ。
米さえあればそれでいい。
醤油はあるし米があればTKGが……いや、無理か。
卵が不安すぎる。
手持ちの卵は安全面が確かだとは言いづらい。
焼く分には問題ないけど流石に生はね……。
どっかに養鶏場があってそこで産みたて新鮮卵が買えたりしないものか……。
「そういえば、おすすめの宿は聞いたの?」
「あっ!」
「レント……。」
「だ、だって、米だよ米。そんなのあるって聞かされたらだれだってそうなるって……。」
多分アカネや蒼井もそうなると思う。
だから、僕は悪くない!
宿に関しては露店で適当なものを購入ついでに情報収集をして、その中からお風呂もついてて厩舎もあり馬車が置ける宿をチョイスする。
その分お高くなっておりますが、まあ必要経費だ。
宿を取り、早速街へと繰り出す。
そういえば宿の名前なんだっけ?
まあ、場所さえわかれば問題ないか。
それに誰か1人くらい名前を覚えているだろうし。
それよりもマハーデルへ行かなくては。
「って、あれ? マハーデルってどこだ?」
「それも聞いてなかったね。」
「また情報集めかよ!」
「いやそれ、自業自得だよね。」
「蒼井は米があると知って、冷静でいられると?」
「それは無理。」
「2人とも……。」
セフィア達に呆れられるが、無理なものは無理。
もはや日本人が背負いし業と言っても過言ではない。
そして日本人の魂を持つアカネはあらぬ方を向いていた。
同類だからね。
またも情報収集の為に露店で適当に買う。
丁度いいし魚介系の物を中心に買っていく。
干物ばかりだけどあって困る物でもなし。
これから米を買うわけだし一緒に食べたいじゃないか。
アジの干物を焼いて、それをご飯と味噌汁と一緒に……考えただけでよだれが……。
そしてついに見つけたマハーデル。
ここに、米が……
「米? すまんね。今売り切れてて入荷するのは10日後だよ。」
「嘘だろおおおおおおおおおおおお!!!」
ここまで来てお預けとか……本当にもう、勘弁してくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます