第938話 嫌な思い出を思い出すので。的なお話
お通夜ゾーンには爆死した人が集まっている。
多分邪魔にならないように退いたけど、ショックからまだ立ち直れなくて立ち尽くしてるって感じなんだろう。
ってか、よく見たらウチの連中も混ざってるじゃねーか。
「えーと、とりあえずリナさんはどうだったんですか?」
リナさんはお通夜ゾーンには混ざっていないので、お通夜ゾーンから目を逸らしつつ聞いてみる。
「私も大したものは手に入れられなかったんですけど、これが貰えました。結構可愛いですよね?」
そう言って見せてくるのはブレスレット。
過度な装飾はなく、小さな鎖とハートの飾りで構成されているチェーンブレスレット。
どう見ても高価な物ではなく、効果もそれほど高くはないだろう。
だが、そんなのはリナさんにとっては関係ないようだ。
まあ、物の価値なんてそんなもんだよな。
気に入るかどうか、それだけだ。
金銀プラチナ、そこに沢山の宝石を使った物もそれはそれで凄いとは思うけど、それはあくまでも値段が凄いって話。
それを気に入るかどうかは人それぞれ。
高い物がいいという人もいれば、派手なのは好まないという人もいる。
結局のところ、自分の中でこれはいい物だと思えればそれでいいのだ。
「そうですね。よく似合ってますよ。」
「えへへ。」
うん。
かわいい。
と、そういえば俺、リナさんには何も贈ってないよな。
アイリスさんもだけど。
セフィア達はもちろん、レイダさんやアカネ、果ては蒼井にもなんやかんやありつつも何かを買ってあげた事あったのに、2人には何もあげてない。
これは……流石にどうかと思う。
ちょうどこの後ウィンドウショッピングするしその時に……いやいや待て待て待ちなさい!
そんな簡単でいいのか?
ここは自分で作って渡すべきじゃないのか?
というか指輪は!?
婚約指輪とかそういうの渡してないよね?
いや、それは流石にまだ早過ぎるか。
でも、何か作るべきか?
…………………。
ま、いいや。
あんまり考えていても答えなんて出ないし、その時になったら考えよう。
ウィンドウショッピング中に何か気に入ったのがあってそれを買ってあげるかもしれないし。
「おーい、そろそろ行くぞー。」
お通夜ゾーンの爆死した連中をぞろぞろと引き連れてカジノを出る。
いや、いつまで引きずってんだよ!
カジノを後にした俺達はアデルのおすすめの店で昼食となった。
アデルおすすめの店の理由はギルマスが居て騒ぎにならないよう個室のあるところを選んだ結果だ。
後おすすめできるのなら通い慣れてるし向こうもそう騒ぐこともないかなっていう理由もある。
「ガチャをするなら確定枠くらい用意しなさいよ!」
「あのタイプでそれは流石に無理があるだろ。」
蒼井は武器ガチャをした結果石だけ手に入れたそうだ。
全部外れかよ……ある意味すげーな。
「アデラードさんはどうでした?」
「これ……。」
「あれ、これ見たことあるような……?」
「麻痺耐性の上がる指輪……前に当たった奴。」
「あ、あー、そうか。ダブっちゃったのか。」
全外しに並ぶもう1つの爆死、被りか。
確か三等だったはずなんだけど、また当てたのは運が良いのか悪いのか……。
「アイリスさんは?」
「私はこれっすね。」
「あー、花冠か。そりゃ残念だったね。」
「そうなんすけど、まあ、初めてやって楽しめたからそれで十分かなって。」
「まあ、過度な期待しない方が精神衛生上いいしね。というわけで、いい加減立ち直ろっか。次もあるんだしさ。」
うん。
いい加減このお通夜ムードはなんとかして欲しい。
昔の嫌な思い出を思い出すので。
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