第916話 能書き垂れる事はしないようにしよう。的なお話
リィナさんに案内された店はラーメン店。
いや、ラーメン以外にも普通の定食とかあるからどちらかといえば食堂か定食屋か。
とはいえ、折角リィナさんがラーメンを勧めてくれている事だしラーメンを頂くとしようか。
メニューはラーメン、肉入りラーメン、野菜ラーメン、肉沢山ラーメンの4択か。
醤油、味噌、塩、豚骨とかじゃないんだな。
取り敢えず肉入りラーメンで。
肉沢山はラーメンの味が肉に埋もれそうだしな。
肉入りラーメンは細切れ肉を焼いた物が乗っているだけだった。
ラーメンの味も確かにラーメンだったけど、それだけだ。
特に印象に残る物ではなくて、まさしく定食屋のラーメン。
何の特徴もない。
異世界で、手探りでこれだけできたなら十分凄いとは思うけど……うーんって感じだな。
「どうだ? 美味いだろう?」
「そうですね。ちゃんとラーメンになってますね。」
普通ですけどね。
「だろう?」
「でもこれ、今後生き残っていけるんですかね?」
「どういう事だ?」
「大して特徴が無いんですよ。今はヨージさんの店が大人気だから他の店も客が来ますけど、仮に3号店、4号店と店が増えていったらどうなると思います?」
「……そっちの方にも客が流れる。」
「はい。まあ、そうたくさんの店を出すとは限りませんけど、ヨージさんの店で修行した人が後々店を作ったりとかした場合、本家で学んだわけですから当然人気が出ます。そうなってくると何の特徴もないこことかからは客足が遠のくんじゃないかな。」
学んだそこまで行くにはまだ数年掛かるだろうし、それまでにブームが鎮静化してるかもしれないから何ともいえないけど。
少なくともラーメンを目当てにした客は減るんじゃないかな。
「その話、詳しく!」
「うわっ! びっくりした!」
なんか突然後ろから話しかけられた。
話しかけてきたのは店の人。
多分調理担当の人とかじゃないかな?
コック帽子みたいなの被ってるし。
「あの、なんか気に触る事言ってしまったのなら謝ります。すみません。」
「そんな事はどうでもいいのでもっと詳しく教えてください。」
「えぇ〜……。俺、別にラーメンに詳しいわけじゃないですよ?」
知識なんて某農業系アイドルグループさんの冠番組とか漫画とかで得たものくらいしかないぞ?
「それでも構いません。少しでもより良いものにしたいんです!」
「まあ、そういう事なら……。えっと、まず基本的にラーメンはタレ、スープ、油、麺の4つの要素で出来てます。タレは味を決めるもので醤油、味噌、塩が基本です。スープは魚介系、鶏ガラ、豚骨なんかがあったりします。キノコ類や野菜なんかも入れたりしますね。そして油ですけど、ラードや胡麻油、鳥油なんかに、ニンニクを入れて熱した後ニンニクを取り除いた油とかもあります。そして麺ですけど、硬さや太さに変化を持たせたり、小麦の産地に拘るのもアリです。まあ、ここまではラーメン自体の基本ですけど、重要なのは店独自の個性を出す事です。どこどこの店のラーメンは麺のコシが素晴らしいとか、味噌豚骨が売りだとか、そういうのがあった方がリピーターが多くなりますし、口コミが広まる際にもそういう特徴があった方が興味を惹かれやすいです。」
「なるほど……。」
……なんで俺はなんちゃってコンサルなんかしてんだろ?
言ってる事八男のパクリになってないよな?
「と、とにかくそんな感じだから。俺はその道のプロじゃないから、これくらいしか言えないです。後はそちらが試行錯誤して工夫してください。」
「はい!」
その後、俺はラーメン界隈で店の名を売るための切っ掛けを与えてくれる『ラーメンの先導者』と呼ばれる事になる……なんて事にならないよう、今後ウンチクとか能書き垂れる事はしないようにしよう。
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