第887話 まさかの詫び魔剣である。的なお話
〜第三者視点〜
「そして、特に迷惑をかけたレントさんとナタリアさんはこちらもどうぞ。そのアイテムバッグの中にはそれぞれが消費したアイテム類と安らぎのテントが入っています。安らぎのテントは内部の者の体調を整え、疲労を癒す効果があります。当迷宮に挑む時にでも使ってください。」
別に迷宮内だけでなくてもいいが、そこは迷宮担当の神なので。
「最後に……模擬戦をしましょうか。相手は別室で待機している魔物達で。」
「「「はい?」」」
突然アリシアが突拍子も無いことを言い出した。
何が最後になのか分からないし、模擬戦をするということの意味も分からない。
「ナタリアさんは1度死にましたよね? 今は大丈夫ですが、その時のことが心に深い傷となり今後の冒険者活動に支障をきたす可能性があります。なので、そうならない為に今の内に死の恐怖を上書きしておきましょう。何度か先程のカオスロードドラゴンと戦っておけば、模擬戦の内の1回として、大変だったけど身のある経験だったと、上書きできるはずです。蓮斗さんは大丈夫だとは思いますが、一応念の為。皆さんもご一緒にどうですか? 高ランクの魔物と死ぬ事もなく戦えるのは貴重な経験になると思いますよ? とはいえ、強制するものでもありませんし、気が向いたらでいいので。では、参りましょう。」
そう言って別室に向かって歩き出すアリシア。
自分もアレクシアとエルナに対して似たような事をした覚えがあるレントはすぐに後を追う。
そんなレントの姿を見たナタリアは慌ててついて行く。
他の面々も参加するにせよしないにせよ、見学はするつもりのようで3人の後について行った。
別室は無駄に広く、確かにそこでなら模擬戦をしても問題にはならないだろう。
そして、既に別室にいた3体の魔物は物凄く寛いでいた。
ミノタウロス亜種は寝ているし、漆黒の騎士はラフな鎧(?)に着替えて(?)いるし、カオスロードドラゴンに至っては白髪の混じる黒髪をオールバックにしたダンディーなおじさまへと人化して優雅にお茶を楽しんでいた。
「今から模擬戦をするので準備して下さい。」
「はて、どちら様ですかな?」
ダンディーおじさま喋った。
いや、人化しているのだから喋っても不思議ではないのだけど、魔物は喋らないという先入観がある面々は皆驚いている。
紅玉の絆?
彼等はそういうものだと知ってるので驚いてません。
情報源は某女神の布教本。
「私はアリシア。簡単に言えばこの世界を作った者であなた方の上司の上司です。」
「そ、創造神様ですか!? す、すみません! 今すぐ支度しますね! こら、起きんか莫迦者が!」
それから5分。
漆黒の騎士は戦闘用の鎧に着替え、寝ていたミノタウロス亜種は頭にたんこぶをつけつつもきっちりと目覚め、その2体の後ろに威風堂々といった様相で鎮座する黒と白の鱗を持つ竜がスタンバイしていた。
「ではナタリアさんから参りましょうか。武器の慣らしもありますし、初戦はミノタウロス亜種で。おっと、そういえばまだ説明しておりませんでしたね。ナタリアさんの持つ光槍フュテュールは光を溜め込む力があり、《輝け》のキーワードを発する事で溜め込んだ光を光線として放つ事が出来ます。最大まで溜め収束して放つ事で摂氏5000度の光線となり全てを焼き払い、拡散させれば周囲一帯の不浄を浄化する事が出来ます。蓮斗さんの紅剣アヴニールは魔力を込め《
「いやあの、それってつまり……魔剣って、事ですよね?」
「あ、そうなりますね。」
ずっと欲しいと、かっこいいと思っていた魔剣。
レントはそれをついに手に入れたわけなのだが、入手方法がアレだ。
嫉妬した神の詫びとして与えられた、詫び魔剣である。
ダンジョンに挑み困難を乗り越えて手に入れるとか、高名な鍛治職人に気に入られて譲ってもらえるとか、かつて名を馳せた剣豪から譲り受けるとか、そういうのを想像したりもしたであろう魔剣。
それがまさかの詫び魔剣である。
レントはすっごい複雑な心境であった。
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