第886話 だから台無しだよ。的なお話
〜第三者視点〜
アデラードに感謝を述べたアリシアはその後何が起きたのかを説明する。
セフィア達の時もそうだが、神が妹を取られると嫉妬して起こしたとは流石のアリシアも説明するのは憚られ、その辺の内容は省き迷宮の存在意義とそれによる鍛錬が目的と説明された。
アデラードは迷宮の存在意義について少し思うところがあるようだ。
迷宮都市と呼ばれるリステルの冒険者ギルドギルドマスターなだけはある。
「私のことを知らない人も多いですし、改めて自己紹介をさせてもらいますね。私の名前はアリシア。この世界を創造した神です。」
みんなを連れて戻ったアリシアは改めて自己紹介を行うが、相手が女神、それも創造神なんて言われるものだから辺りはパニックになってしまった。
騒々しくなるのも仕方ない。
当然だ。
だって創造神様なのだから。
「はい。みんなが静かになるまで15分かかりました。」
「「「ブッ!」」」
パニックが収まった後突然校長先生をするアリシアに日本生まれの3人が噴き出す。
何故そんな事をしたのか?
とあるスライムのラノベでも読んだのだろうか?
「私はアルティア。迷宮を司る神です。今回は色々とご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。」
頭を下げて謝るアルティアに再び辺りはパニックになる。
神に謝らせたのだから仕方がない。
その様子を眺めながらみんなが落ち着くまで再び静かにする【
彼等にとって神が謝ったくらい、騒ぐほどのことでもないのだ。
現にレントはよく謝られている。
「今回のお詫びとして皆様には私の加護を授けます。既に加護を持っている者は1段階あげて恩恵を、恩恵を持っている者にはもう1段階上の祝福をそれぞれ与えましょう。あ、口止め料も入ってますので遠慮は無用ですよ。」
神の加護は敬虔な教徒が毎日祈りを捧げたからとて貰えるものではなく、枢機卿になれば、教皇になれば貰えるというのものでもなく、神に気に入られるかどうかという完全な運でしかない。
過去には毎日お祈りをする聖女と呼ぶにふさわしい女性は貰えず、その日初めて神に祈った浮浪児が貰えたなどという話もある。
それほどまでに神の加護というのは特別なものなのである。
そんな加護を数十人が貰えるというのだから神からの詫びとしては十分過ぎるものであると、アリシアと関わりのない者達は考えた。
しかしレント達にしてみればアリシアの加護は割と簡単にポンポンと貰える代物で、特別という認識は既に持ち合わせていない。
ぶっちゃけレントと結ばれれば貰えるので教会関係者には絶対に知られてはいけない。
純潔を重んじる宗教観の癖にレントとアレな事すれば貰えるのだから考え方とか今までの伝統とかそんなあれこれが音を立てて崩れ去ってしまう情報なので。
「加護の内容ですが、他の人にしている簡単なものではなくちゃんとしたもので、効果はレベルアップ時に全能力の上昇量を増やし、属性所持上限解除、スキル取得率及びスキル経験値取得量の上昇(3%)というものです。恩恵は取得経験値の増加と状態異常耐性が追加され、祝福ではレベルアップ時の全能力の上昇量が更に上がり、状態異常耐性が状態異常半減…が追加されます。」
効果が半端なくなっていく加護シリーズ。
最終的にはどうなるのか気になるところだが、果たして過去にそこまで到達した者はいるのだろうか……。
「次に、直接迷惑をかけた蓮斗さんとナタリアさんにはこちらを。」
アリシアがそう言って指パッチンをすると2人の前に光が現れる。
光は瞬く間に形となりその場に現れる。
ナタリアの前には純白の槍が、レントの前には真紅の剣がそれぞれの目の前に浮いている。
「光槍フュテュールと紅剣アヴニールです。どちらも未来という意味があります。ネット検索したら出ました。」
ナタリアはネット検索という単語にピンとこないようで頭を傾げているが、レントは微妙な顔だ。
それくらい分かるだろうに何故にネット検索なのかと、疑問と呆れの二重奏顔だ。
「お2人の未来に幸多からんことを願ってこれらを渡します。」
まるで結婚する2人への門出の言葉だ。
しかもお揃いの武器。
見た目は白い槍と紅い剣で白い鎧のナタリアと【紅玉の絆】のパーティリーダーと色味は合ってるので普通の人は気付かないかもしれないが……どうやら手遅れのようだ。
セフィア、リリン、ルリエがロックオンした様子。
「私からは以上です。そして……。」
「私からは皆様にこれを。身代わりの指輪です。迷宮内における死を1度だけ無効にし迷宮入り口に転移する道具です。回数制限無しにすると死んでも大丈夫という考えが癖になり、迷宮外で隙を晒してしまう可能性があるので、それを防ぐ為に回数制限を設けました。なので、私がケチなわけでは決してありません。」
だから台無しだよ。
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