第880話 この状況を打破できる一手は無いのか? 的なお話
不意打ち気味に急接近して脚を一閃。
ズバッと斬れる訳ではないがそれでも鱗を突破。
ほんの少しだけ肉にも刃が到達した……まあ、刃っていうか、炎だけどね。
断罪炎覇を引っ込めてそのまま走り抜けナタリアさんと合流する。
ドラゴンからは距離を取り、この後の作戦をどうするか話し合うが、その話の最中もドラゴンからは意識を外さない。
2度も食らいたくないからな。
「それでどうですか? 攻撃は、効いてますか?」
「あんまり芳しくはありませんね。少なくとも効いてる様子はありませんでした。先程も気を引くのが精一杯でしたし。」
「じゃあ、俺が接近戦をするからナタリアさんは魔法で攻撃を。」
「いくらなんでもそれは無茶です! 私は長物でしたが、あなたは剣、それも折れてしまっているじゃありませんか! そんな物では到底無理です!」
「こうすれば問題ない。実際、さっきもこれでかすり傷程度だけど、肉体にダメージを与えれたしな。」
断罪炎覇で剣を形成するのを見せてすぐに引っ込める。
魔力を無駄にはできないからな。
「ですが、それではレントさんに敵の注意が向きます。それならば2人で分散した方が良いのでは? 私も、後のを事考えなければ攻撃が通じない訳では無いですし。」
「いや、後の事を考えないとダメだろ……。」
攻撃は通じるけどその後ぶっ倒れるのはどう考えても論外。
……俺が言えたことじゃないけど。
Dランク昇格試験の時にやらかしたし。
ドラゴンが接近してきて尻尾を振るう。
高さ的に余裕があったので今回はその場に伏せてやり過ごした後、すぐに距離を取る。
後ろに下がってばかりだといずれは壁にぶつかり躱せなくなるから今回は横を通り抜けて反対側へ。
「それよりも後ろから目くらましや魔法で注意を引いて隙を作ってくれ。そっちの方が助かる。」
「分かりました。今はそれで行きましょう。」
「それと、魔法は貫通性重視で出来るだけ同じ箇所を……片翼を狙ってくれ。飛ばれたら厄介だしバランスが崩れれば動きが鈍るかもしれない。」
「片翼?」
「……片側の翼です。」
「成る程。分かりました。」
ちなみにこれ、走馬灯を見て思い出した。
絶対防御とも言える高い防御性能を持つ相手にダメージを与えるには? という問いに対する答えの1つ。
貫通性の高い魔法を高速で連打して防御を削り取るっての。
作戦……というか方針か?
それを決めたのですぐにドラゴンに向かう。
こっからは全力全開、ステータスはフルに使い攻める。
隙をついて大ダメージをというのは難しく、断罪炎覇ではかすり傷程度しか無理で、それ以上となると詠唱に時間がかかり簡単に避けられてしまうだろう。
だから、大ダメージではなくちまちまと小ダメージを蓄積していく事にする。
塵も積もれば山となる。
いや、塵を積んで山としよう。
ナタリアさんも攻撃を開始し、俺も尻尾をかいくぐって足元に。
断罪炎覇を発動し全力で斬りつける。
今回はステータスフル、全身の力を使っての一撃なのでかすり傷よりも深い、切り傷と呼べるものに。
まぐれではなく自分を傷つけられる存在と認識したのか、尻尾だけでなく爪を使っての爪撃、脚での蹴りも使用してくるようになった。
更に難易度が増した。
爪は距離がある為躱しやすく、尻尾も同様。
蹴りは距離が近くからも出せるので注意せねばならず、攻撃回数が伸び悩む。
ナタリアさんが魔法名を言う声が聞こえているので援護はしっかりしているが、やはり足元をうろちょろされるのが鬱陶しいのだろう。
明らかに俺を俺を狙ってる。
だけどまあ、助かる。
それはつまりナタリアさんに遠距離攻撃が向かないということだから。
ドラゴンの代表的な遠距離攻撃といえば、アレ。
ブレスだ。
いやまあ、ナタリアさんに向かないからといってこっちに撃たれるのも困るんだけどね。
多分死ぬし。
脚だけでなく腹部も狙って少しずつ切り傷を増やしていく。
多少は戦えているが、攻撃は常に断罪炎覇。
それ故魔力がどんどん消費されていく。
戦況はジリ貧どころか完全な劣勢。
このままでは削りきる前にこっちの魔力が尽きる。
何か、この状況を打破できる一手は無いのか?
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