第879話 こっから第2ラウンドと行こうか! 的なお話
「ブライト・インパクト!」
技名と思われる語句を叫びながら槍を突き出すナタリアさん。
残念ながら位置的にどのような効果をもたらすのか、どんな威力の技なのかといった事は見ることが出来ないので知ることが出来ない。
ただ、槍が、それも槍の穂先が光っているなくらいしか分からなかった。
尻尾の届かない安全圏まで退避した時にはすでに攻撃は終わっていた。
その攻撃がどれだけのダメージを与えたかは直に見ていないので予想でしかないが……多分ろくなダメージになっていない。
多少なりともダメージがあればドラゴンが呻くなりするだろう。
我慢しているだけか、声を出すほどではない可能性もあるが、それは表情を見る限り無いだろう。
それでも、魔法攻撃で光属性攻撃だ。
僅かばかりでもダメージが入っていると信じよう。
このまま俺が先制し、俺に注意が向いたところにナタリアさんに攻撃してもらうか、別の方法にするのか話がしたい。
それにさっきの攻撃が効いているかどうか、攻撃した本人に聞いて見るべきだ。
というわけで一旦合流しよう。
その為にはまず牽制を。
ナタリアさんが安全圏まで退避するのが先だ。
「ブレンネンドルヒ!」
狙うは顔面。
炎の短剣をばら撒くが、どうせなら眼とか焼けないかな?
まあ、無理でしてたけど。
元が一点突破じゃなくて広範囲を攻撃するってのを念頭に置いて開発した魔法だからな。
とはいえ、さすがに鬱陶しかったのか瞼を閉じ煩わしそうに顔を逸らし、そのお陰でナタリアさんも無事安全圏へ。
ホッと一息。
さて、次はナタリアさんと合……
「危ない!」
へ?
ナタリアさんの方に意識を向けたほんの僅かな隙を狙い、こちらに接近して尻尾を振ってくるドラゴン。
やばいやばいやばい!
こんなのまともに食らったら死んでしまう!
あれ、なんか頭に妙な景色が……これが噂の走馬灯!?
って、そんなの見てる余裕ないのに!
浮かんでくるのは『生きるのを諦めるな!』と叫ぶアニメキャラに『頑張ろう。みんなと会えてよかったってちゃんと思えるくらい』と言う漫画のキャラに『ホントの自分を始めるために、今までの自分を、終わらせよう』と言うアニメキャラ……って、そこは普通好きな人との想い出とかだろうが!
結構余裕あるのな俺!
見えてる世界がスローになるような感覚の中、ゆっくりと剣を動かして盾にしようとする。
見える世界と動かす感覚の齟齬がもどかしい。
剣を必死に動かし、同時にバックステップをして衝撃を緩和しようとする。
ギリギリで防御が間に合い、足が地面から離れた瞬間、意識が途切れた。
◇
空が見える……。
…………そうだ!
ドラゴンと戦っていて、あれからどうなった!?
どれだけ時間経っただろう!?
「レントさん!」
跳ね起きて声のする方を見るとドラゴン相手に接近戦をしているナタリアさんがいた。
「目が覚めましたか!?」
「はい。それで、どのくらい寝てましたか?」
「ほんの1、2分ですわ!」
それだけしか気絶していなかったのはラッキーだ。
即座に参戦を……って、剣が軽い?
剣、折れちゃってるよ……。
半ばからポッキリと。
はは……そりゃ軽くもなるわ。
あ、折れた先がなんかあそこに落ちてるや。
どうしよう?
こんな事なら騎士の使ってた魔剣を回収しておくべきだった。
まるで墓標のように突き刺さってたから持っていくのが憚られて、そのままにしてきてしまったけど、持ってくるべきだったか?
って、俺そもそも両手剣スキルねーや。
ならストレージの剣を……って斬れ味劣るし炎熱耐性が無いから断罪炎覇が使えない。
それだと火力不足だ。
いや、断罪炎覇は剣よりも炎で焼き斬っている。
なら折れたままでも良いんじゃないか?
やってみよう。
剣から炎が吹き出し刃となる、いつもの感覚、いつものイメージ……。
「断罪炎覇!」
イメージ通りのいつもの断罪炎覇だ。
これならイケる!
恐らく俺にドラゴンの注意が向かないように接近戦をしていてくれたのだろうナタリアさんの負担を減らすためにも急いで参戦する。
さあ、こっから第2ラウンドと行こうか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます