第876話 どうしろって言うんだよ……。的なお話

〜レント視点〜


「気がつきましたか?」

「えっと……ここは……ああ、そうか。確か突然転移して、それでミノタウロスと騎士の魔物と……そうだ! あれからどうなりましたか!? 時間は? それにあの後魔物とか!」

「お、落ち着いて下さい。怪我していたんですよ。」

「そういえば……。」

「時間は1時間半程。あの後扉が開きそのままで、魔物が現れることはありませんでしたわ。」

「そうですか……。」

「それで、お加減はよろしいですか? 一応ポーションを飲ませておきましたけど、どこか痛むとか、気分が悪いとか、そういうことはありませんか?」

「今の所はそういう事はないけど、内容が内容なだけに、暫くは安静にした方がいいですよね?」

「普通ならばそうですけど、ここが安全だという保証がありませんのでなんとも……。」

「ああ、それもそうか。」


なんらかの罠によってここに転移して来たわけで、つまりはここもまた罠の中。

油断した所で突然魔物が……なんて事が無いとも限らない。

ならばどうするか……あれを出すべきか?

あの、オークソテー味のポーション。

裏路地にいた謎のポーション売りのお姉さんから貰ったポーション。

オークソテー味とかいう変な奴なのに部位欠損すらも治す驚異のポーション。

いや、まずはナタリアさんが飲ませてくれたというポーションについて聞こう。


「ナタリアさんが飲ませてくれたっていうポーションについて教えてくれない?」

「上級ポーションですわ。流石に部位欠損は無理ですがかなりの効果を発揮するものです。」

「上級……ならあれは必要ないかな。」

「あれ、ですか?」

「部位欠損も治る奴。味は変わってるけどね。それに1つしかないし。」


内臓破裂まではいってないだろうし、オークソテー味のは飲む必要はないな。

上級なら大体治ってるはず。

でも念のため継続回復効果のあるリジェネポーションを飲んでおこう。

あれならまだ治りきってなくても回復力を上げてくれそうだし。

あとはMPポーションかな。

新技でかなり魔力を使ったからな。

ロストマインドする程だし。


「これで多分大丈夫だと思いますけど、念の為もう少しだけ休んで、それから先に進みましょう。」

「分かりました。では今の内に軽く食べておきましょうか。激しい戦闘でしたから。」

「それもそうだな。」


かなり動き回ったし、結構寝て(というか気絶)いたしで小腹が空いている。

というわけで軽くつまむ。

今の気分的にお菓子とかじゃないので干し肉を齧る。

しょっぱいので飲み物は紅茶じゃなくてポ◯リ擬きを作って飲んでるけど、これはやばい。

甘いのとしょっぱいのの無限ループだ。

幸いなのは干し肉なので顎が疲れるという事。

これ煎餅系だったら危なかったかも。

いや、煎餅には緑茶だな。

異論は認めない。


そんなわけで30分ほどゆっくりと休んでから扉の先へ。

300mくらいある無駄に長い通路を抜けるとさっきまでいたコロシアムにそっくりな場所に出た。

ここの方が広いけど。


という事は当然戦闘があるという事だ。

はぁ、辛い。

分かっちゃいたけどさ。

今度の相手はどんなのだ?

ミノタウロスからタウロス繋がりでケンタウロスか?

それとも騎士の上位互換で騎士団長にでもなるのか?

扉を見ているが一向に開く気配はない。

え、何?

閉じ込められた?


「上ですわ!」


上?

って、なんだこりゃ!?

コロシアムの上は空でした。

ここは迷宮で地下のはずなのに何故か空があって太陽がある。

その空から黒い影が少しずつ迫ってくる。

影の主は突如急降下して来てズドンと地面を揺らすかと思いきや、地面近くでホバリングしゆっくりと着地した。


影の主は、一言で言えばドラゴン。

二足歩行するタイプで前足が手になり、背中に大きな翼を持つドラゴンだ。

白銀に輝く角と漆黒の角。

白銀と黒鉄と言うべき2色の鱗、いや、鎧を纏うドラゴン。

これまた普段ならばカッコいいと諸手を挙げて喜ぶような奴だが、敵として現れるとなると話は別。

こんな、こんなヤバそうな敵、どうしろって言うんだよ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る