第865話 また、目の前で……的なお話

〜蒼井視点〜


朝になりセフィアちゃんに起こされたけど……すごく眠い。

昨日の見張りの2番目が私だったのよね……だから眠くて眠くて。

いつもならもう一眠りしてるところだけど、あいにくここはダンジョンな訳で、そうもいかないのよね。

ふぁ……気を引き締めないと。

今日は20階層のボスに挑むんだし。


昨日の夜の話の中で急遽決まった一緒にご飯を食べるというのは今日の朝から始まってるみたい。

私としても貴族の料理人をやっていた人の娘が作る料理を食べられるのだから文句はない。

セフィアちゃん達の料理ももちろん美味しいけど、貴族の料理人をやっていた人の娘って肩書きが重要。

やっぱり貴族の家とかそういうのには憧れちゃう。


朝食を終え、何故かいつもある食休みの時間を終えてダンジョンアタックの続き。

いやまあ、食べてすぐに動くとお腹痛くなるからあった方が助かるんだけど。


そうしてダンジョンを進んで行くんだけど、私は後ろの警戒をする関係で戦闘には全然参加できない。

楽なのはいいことだけど、レベルが全然上がんない。

それは困る。

ダンジョンアタックといえば普通レベル上げでしょう?

お宝でしょう?

なのになんでそれ全部できないの!?

後ろの警戒も大事だけど、少しは戦闘に参加させて!


それに、極たまに気配察知に引っかかることもあるけど、それだって基本ユキノちゃんが持って行ってしまう。

私のメイン武器はアリシアさんから貰った魔法銃だから、こういう狭くて曲がり角の多い場所には向かない。

そもそも、曲がり角の先にいる時点で気配察知に引っかかるからこっちに来る前にユキノちゃんが倒してしまう。

姿が見えなきゃ撃てないじゃないの。


そんなこんなで特にすることもないまま19階層へ、そして何度か休憩を挟んでボス階層への階段前にたどり着いた。

今日私は何もしてないけど。


遅めの昼食を終えて準備万端、ボス戦へ。


「ここのボスはガーディアンゴーレムです。鈍重ですが頑強な体と高い攻撃力を備えております。また、機動力の低さを魔法で補ってくるので注意が必要です。」


ボス部屋までの一本道を進んでいる間にナタリアさんがボスについて教えてくれる。

こういうのは対面したその場で対策するもんだと思うけど、ここは現実だし素直に助かる。


いつもの松明に火が灯る演出。

この後は黒い靄が発生してボスを形作るのだけど、この階層は違うようで、天井から巨大なブロックの塊が降ってくる。

着地した時の振動は凄まじく、床が揺れ土煙が舞う。

いや、ここブロックが敷き詰められた床で舞うほど土なんてないんですけど……。

土煙が晴れるタイミングでブロックの塊は変形を始め、巨大なゴーレムになる。

これ風見なら喜びそうな演出ね。


そしてボス戦。

今にして思えば、あの時の訓練でゴーレム戦をやったのはこの時のためなのだろう。

もちろん、色々と違うところもあるけど、アンジェラさんが攻撃を受け止め、ビスカさんが魔法を防いでくれるので安心して攻撃することができる。

風見も例の千変魔杖術を使っている。

サンドゴーレムよりも硬いし斬撃武器は向かないんだと思う。


その点、私の武器は魔法銃だからなんの問題もない。

使ってくる魔法からこのゴーレムは土属性と判断し、風属性のカートリッジをセットして攻撃。

ゴーレムだから痛みを感じないようで効果的なのかはわからないけど、とにかくガンガン撃っていく。


訓練したのが良かったのか、戦闘は終始優勢のまま、誰1人大きな怪我をすることなく勝利を飾ることができた。


勝利の余韻もそこそこに宝箱の中身を確認する……私以外が。

前に変な下着が出た事を忘れない。

サイズ知られたのすっごい恥ずかしかったし、またあんなのが出て来るのは困る。

幸い今回の宝箱の中身は下着じゃないようで、どこかで見たことのある青い結晶だった。

というか記録結晶だった。

……いや、なんでこのタイミングで?


それの扱いを相談するためなのだろう。

ナタリアさんは風見と話をする為に近づき……そして風見と一緒に消えた。


「え……?」


何?

何が起きたの?

風見はどこ……?

突然……風見の足元が光って、それで……え?

なんで?

今さっきまですぐそこに居たよね……なんで……またこんな……そんな……。

あの時も、突然目の前でタクシーに轢かれて……それで、風見が血まみれになって……。

また、目の前で……わ、私は……。


「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!!」

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