第849話 後は任せた。的なお話

迷賊は何人か死んでるけど、それ以外は全部捕縛した。

殺したのは多分ナタリアさん。

他には後衛組。

多分魔法やら弓矢やらの当たりどころが悪かったんだろう。

運が無かったんだと諦めろ。


「それで、これをどうしますか?」

「どうしましょうね?」


よくよく考えてみれば先に手を出したのはこちらからだ。

この場合だと正当防衛にはならないのかもしれない。

いや、ならないだろうなぁ。

でも相手は迷賊なので殺しても問題ない気がしないでもないが、まだ完全に迷賊だと決まったわけじゃないんだよな。

十中八九迷賊だとしても。

あ、このだとしてもの使い方はヤダな。

だとしてもっ! の使い方は運命とか強敵みたいな、何かに抗う時に使いたい。


「俺達が何したってんだ!?」


捕まってる迷賊が囀るが、そんなものは無視無視。

重要なのはこいつらが黒であるという証拠なのだ。

正当防衛は無理だけど、それ以外でもしょっぴける筈。

とりあえずステータス鑑定でも使ってみようかね?

でもこれ、レベル低くてあんまり使えないんだよねぇ……というか今となってはステータス鑑定よりもアイテム鑑定の方がレベル高いくらいだし。

最初の方は同意無しだと大した情報得られないから、全然使ってこなかったんだよな。

やはり近いうちに上げとくべきなのだろうか?

ま、今はそれよりも迷賊供の鑑定だな。


リーダーっぽいのは……やっぱり名前だけか。

他の連中も駄目。

次は気絶してる奴らを見てみるか。

同意無しだけど、意識が無いからワンチャンあるかもしれないし。

お、見えるぞ。

うわぁ……殺人、暴行、窃盗、強姦ってドス黒いまでの黒じゃねーか!


「進んで殺したいわけじゃないですし、このまま放置でよくないか?」

「でもうるさくありません?」

「それはまあ、土魔法で囲うとか、猿轡噛ませるとか?」

「普段ならば殺しているところですが、今回はレントさんの意思を尊重しますわ。」

「そうですか。では早速……と、その前に、まずはこれで縛っておきましょう。」

「なんですか、それ?」

「重黒縛鎖っていう鎖で、縛った相手のステータスを下げ、魔力を奪って重くなる鎖です。以前盗賊のアジトで拾ったんです。」

「便利な物をお持ちのようで。」


まあ、さっき思い出したんですけどね。

普段使う事なんてないからストレージの肥やしになってる物は結構忘れてたりする。

今みたいに必要な時に思い出せるといいんだけど。


「じゃあ改めて、セフィアよろしく。」

「任せて。アースウォール!」


相変わらず汎用性高い魔法だな〜。

その名の通り壁を作るだけじゃなくて迷路を作ったり簡単な個室を作ったり牢屋を作ったり、更にはベッドや名前は知らないけど列整理に使う奴まで作れるんだもんな。

もうアースウォールじゃなくてアースメイクとかガイアメイクとかそういう名前に変えればいいのに。


「最後に蓋をしてっと……よし、出来た。」

「あ、セフィア、ちゃんと空気穴も作らないと。」

「ああ、忘れてたよ。……今度こそ、これでよしっと。」


空気穴があるので迷賊が騒ぐ声が少し聞こえてくる。

猿轡を噛ませる事を提案しておいてなんだけど、あんまりやりたい事じゃなかった。

というか近づきたくないし近づかせたくなかった。

というわけで別の方法を考えた。


これでどうかな?

よし、成功したようだ。


「それはなんですの?」

「内部の音を外に漏らさない魔道具。あくまでも内部の音だから上手くいくか分からなかったけど、上手く行ってよかったよ。」


魔道具で作ったエリアで入り口に壁を作ってみたら案外防げたりしないんじゃないかって思ったんだよね。

外の音は聞こえるけどエリア内部を通るから反対側には通らないんじゃないかって。

結果はこの通り大成功。


「それがあるならわざわざ壁を作って囲わなくても良かったのでは?」

「それだとアイテムボックスの中身を使って壊されたり盗まれたりする可能性がありますから。鎖で縛ってても抜け出せる奴が居るかもしれないし。」

「確かにそうですわね。」


さて、これでようやく休める。

時間は戦闘をしたり拘束をしたりで交代時間も間近に迫っている。

後は戦闘での汚れを拭いたり着替えたりしてれば交代時間になるだろう。

それじゃあレイダさん、後は任せた。

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