第847話 色々ありすぎだチクショーめ。的なお話
テントの設営があっさり終わった。
ベッドなんかもストレージから出すだけだからあっという間に終わったんだよね。
あ、今度野営用のベッドも買おう。
土のベッドとか出し入れしてるし今更だし、何より、どう考えても普通の木のベッドよりも土のベッドの方が重い!
アイテムボックスで土のベッド持ち運ぶのはおかしいし、だったら木の方がまだマシだろ。
ストレージは容量無限だけど、一応周りの目もあるしね。
……周りの目を気にするのならベッドは持ち運ばない方がいいんだろうけど。
でも、ベッドあった方が快眠度合いに差がね。
夕食を終えてほんの少しの雑談、その後に見張りとなった。
俺は今回3番手。
途中で起きるので辛いが、まあ、誰かがやらないといけない事だしな。
「あら、また一緒ですわね。」
「まだ4日なのにまた一緒になるとか凄いですよね。」
「そ、そうですわね……。」
ナタリアさんと2人っきりか。
なら、丁度いいしあの事を聞いてみよう。
何となくの推測はしたものの、やっぱ気になるし。
「ちょっと聞きたいんですけど、いいかな?」
「構いませんわよ。」
「プライベートな事なので話せる範囲でいいんですけど……あの、何でビスカさんはスライムが嫌いなんですか?」
あの豹変っぷりはどう考えても何かあったよね?
所謂、あんな事やこんな事になった可能性があるから話せるか分からないんで、話せる範囲でと前置きした。
「私も聞いただけで現場にいたわけではありませんが、まあ、大した事はありませんわよ。少なくとも、あなたが想像したような悲壮な事ではありません。」
「あ、そうなんですか……良かった。」
「良かった?」
「知り合いが酷い目にあっていないんですから、そりゃ良かった事ですよ。」
「なるほど。ですが、大した事はなくても本人にとっては酷い目にあったことに変わりはないんですけどね。」
「それってどんな……?」
ゴクリと、唾を飲み込む音が妙に大きく聞こえた。
「子供の頃に服を全部溶かされて裸に剥かれたそうですわ。なんでも、近所に変わり者の博士が居て人に害のないスライムを生み出そうとしたそうで、服だけを溶かして食べるスライムが脱走し、偶々近くを通りかかったビスカが襲われ服を全部溶かされたそうです。当時はまだ7歳で子供そのものな体型だったそうですが、すごく恥ずかしかったそうです。そういった理由でスライムは全て殺したいほど憎いと言っていました。」
「それはまたなんとも……。」
確かに大した事はなかった。
だってまだ子供だったわけだし。
でも本人にとってはやっぱり恥ずかしかったわけだし、話からして外だろ?
なら、スライムが嫌いになったとしても不思議ではないか。
俺、7歳の頃何してたっけ?
イ◯ズマイレブンの真似とかしてた気がする。
今なら必殺技とか普通に出来そうだ。
気になっていた事が聞けたのでここからは見張りに集中……集中……しゅう……うん。
何も起きねー。
ここセーフティーエリアだし、時間も午前3時だし。
そりゃ何も起きないよ。
魔物は入って来ないしこんな時間に活動してる冒険者なんているわけがない。
今も活動しているとしたらそいつは……。
「足音……ですわね。」
何もないと思った矢先にこれだ。
足音もほんのちょっとしか聞こえないが、間違いなく足音。
何もなくて静かだからこそ気づけたレベルの小ささだ。
こんな時間に活動してて足音を隠す理由なんて1つしかない。
「迷賊ですわね。」
「恐らくは……ナタリアさんはみんなを起こしてきてください。数が分からない以上は万全を期しておきたい。」
「分かりましたわ。」
ナタリアさんがみんなを起こしに行っている間に俺は武器を構え様子を伺う。
たった1日の間に色々ありすぎだチクショーめ。
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