第844話 2人の命日になりそうだということは。的なお話
体だけではなく心も癒された事だし、そろそろ移動を再開しよう。
移動を再開して早速魔物と遭遇……なのか?
落とし穴に引っかかり落ちないように必死になって掴まってるんだけど……。
いや落とし穴って魔物も引っかかるのかよ。
「どうする?」
「……見なかったことにしよう。」
「え、でも……。」
頑張れコボルト君。
ここはお前に任せて先に行くぜ。
穴の中にはお仲間だったものらしき魔石とドロップアイテムがあったりするが……そうはならないように頑張れよ。
「なんか、凄くこっちを見てるんだけど……。」
セフィアにそう言われて後ろを振り返って見るとつぶらな瞳でこっちを見つめている。
うっ……。
なんだろう……某狩猟ゲームの猫を解雇しようとした時の、あの罪悪感を思い出す。
「いや、ここで手助けすると今後コボルトを倒せなくなりかねない。ここは心を鬼にして行くぞ。」
「う、うん……。」
変な物を見た後、ある程度進んで行った所で再びの罠。
確かここは電撃床だったな。
というか、このダンジョン加圧式の罠多くないか?
スイッチを踏むと天井が落ちてきたり、スライムが落ちてきたり、コボルトが落ちていたり。
いやまあ、対処するのが楽だから助かるんだけどね。
踏まなければいいだけだから。
「……誰か来る。数は3人。」
電撃床を越えた所でリリンが告げる。
3人か……ユーリ達じゃないよな?
あの3人ならセフィアを探すとか言って逆走してきたとしても不思議じゃない。
しかし、やって来たのはユーリ達ではなく男2人と女1人のパーティだった。
しかも3人とも虎耳虎しっぽ。
虎獣人だ。
虎獣人なんてカインの冒険者ギルドのギルドマスターのクレアさんを思い出すな。
「こんにちは。見ない顔だけど、君達新人?」
「おい、いきなり失礼だろ。すまない、連れが失礼した。俺達は【烈風の虎】というパーティを組んでいて俺はカイ。こいつはレイでそこの無口なのがマックス。一応ゴールドランクだ。」
「一応じゃないでしょ。ゴールドランクになってから3年経つじゃない。もうベテランよ。」
「結成から10年ならまだ中堅がいい所だ。それに、彼等をよく見ろ。……どう見ても新人じゃないだろ。」
「……へぇ。確かに新人じゃなさそうだね。」
まるで見透かそうとするような、そんな視線を感じる。
多分アデラードさんなら見透かすような視線になってたんだろうけど、残念ながらそこまでの圧は感じない。
ゴールドランクといえばAランク相当なのだが、やはりSSには遠く及ばないということか。
「俺達は【
「初めまして、セフィアです。」
「リリン。」
「初めまして、ね。迷宮都市では大体の人に知られてると思ってたんだけど、私達もまだまだだなぁ。」
「新人じゃないんだろうが見ない顔だ。俺達が潜っている間によそからやって来たんだろうよ。」
「ああ、成る程。それじゃ知らなくても不思議じゃないね。」
「いやでも、俺達結構長いこと……どのくらいだっけ?」
「少なくとも半年は過ぎてるはずだよ?」
「少なくとも半年は経つらしいんですけど、どれくらい潜ってたんですか?」
「どのくらいだろう?」
「44階層まで行ったから数ヶ月は経つんじゃないか?」
「それなら知らなくても不思議じゃないですね。」
「だな。」
「……………惚れた。」
「は?」
「急にどうした?」
烈風のカイさんとレイさんと軽く雑談していると突然マックスさんが惚れたとか言い出した。
急に何言い出すのこいつ!?
「セフィア、さん。結婚を前提に、お付き合いして下さい。」
「…………は?」
いきなり何言い出すんじゃボケェ!
ぶち殺されてぇのか!?
「うわっ! あのマックスがいきなり告白かよ!?」
「マックスがそんなこと言うなんて珍しいね。じゃあ、私はレントを貰おうかな。」
「ふ、ふふふ、面白いことを言うねぇ……。」
「……こいつはダメ。」
「え、君ら急にどうしたの……?」
俺だけじゃなく、セフィア達の地雷も踏み抜いたようだ。
何が理由かはいまいちわからないが、これだけは分かる。
今日は2人の命日になりそうだということは。
すまないな、カイさん。
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