第798話 体験させてもらおうか。的なお話

訓練場に着いた俺達は早速自己紹介を改めて行う。

今回は名前と役割だけではなく、主な戦い方なんかも一緒だ。

だけどスキル構成や切り札なんかは説明しない。

同じパーティではなく今回はあくまでも合同で仕事をするというだけの関係だからだ。

無いとは思うけどなんらかの理由で敵対する事があるかもしれないからそういういざという時に不利になることはしない。

窮地に陥った時はそうも言ってられないから切り札とかスキル構成とかは出し惜しみしないけど。

そしてこちらが全員の自己紹介を終えて、天装の番となった。


「では改めて、私はナタリア・ランベルス。武器は以前説明したこの槍で、編成によって変わりますが戦闘は槍と魔法を使った中衛を担っています。得意魔法は火ですが合わせて光も習得しております。」

「私はルキノです。治癒術師ですが、戦闘では格闘術とメイスを使用します。」


メイス……。


「ねぇルキノさん。これ使います?」

「なんですか、それ?」

「フレグランスってメイスで、作った際に突起物とかあった方が威力上がるかなっと思ってやったらやり過ぎちゃった奴。別名巨大ヤスリ。魔物を削って血みどろにできますよ。」

「いえ、結構です。」


やっぱりダメだった。

まあ、何となく分かってたけどね。


「えーと、次行っちゃっていいかな?」

「あ、どうぞ。」


巨大ヤスリを仕舞いつつ次を促す。


「私の名前はラン。斥候担当でアンジェラ達が抑えているところを急所をぶすりって感じかな。魔法は風だよ。」

「私はフランベルです。調理師ですが戦闘では包丁や鉈を使った戦闘調理術を使います。」


何それ?

そんな流派かスキルあるの?

異世界こえーな。


「魔法は火と水です。」

「次はアタシだな。アタシはアンジェラ。大盾使いだ。この大盾で防ぎ、こいつでぶった切ってる。魔法は一応土が使えっけどあんま得意じゃねーんだ。だから期待すんなよ。」


こいつと言って持ち上げたのは片手斧。

大雑把なアンジェラさんにはぴったりだな。

パワーと重さで叩き切るからそこまで小手先の技術とかは必要ない。

もちろん、技術があるに越したことはないが。


「最後は私だ。私の名はビスカ。タワーシールドを用いており、攻撃は短槍を使っている。魔法はアンジェラと同じく土。足や盾を支えたり魔物の下から土の槍で下から攻撃したりしている。今日はよろしく頼む。」


ビスカさんはアンジェラさんとは対照的で真面目な感じだな。

ちょっと真面目すぎる気もするけど、とりあえず握手しようと手を出してきたので握り返す。

あ、意外と柔らかい。

タワーシールドとか使ってるからもっとタコとか出来てると思ってた。

でもそこはやはり女の人という事か。


「では、合わせてみましょうか。」

「あ、その前に1ついいですか?」

「なんでしょう?」

「俺達は盾持ちというものをあまり経験した事がないんです。なので一度手合わせをさせてもらえませんか? 手合わせをすればある程度特性が分かると思うんですよ。」

「なるほど。分かりました。ではアンジェラ、ビスカ、お願いするわね。」

「りょ〜か〜い。」

「分かりました。」


俺は一度戦ったことあるけどね。

アカネの家の騎士の人。

でもそれだけだったし、みんなもその時にやっただけ。

それに相手は騎士だ。

冒険者とは違う。

騎士としての統率の取れた動きをする為の訓練や守る為の訓練なんかをしてるだろうし、決まった戦闘訓練をしていて言ってしまえば綺麗な戦い方だ。

それに対して冒険者は基本泥臭い。

ほとんどが我流だからだ。

その差を体験してみたい。


「よっし。んじゃアタシからな。誰からやる?」

「俺から行きます。」

「よし来い!」


すぐに構えるアンジェラさん。

さて、騎士の人との差、そして冒険者の盾使いというものを体験させてもらおうか。

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