第796話 人生ままならんもんだな。的なお話

興奮状態の店員さんが戻って来たのはほんの数分後だった。

その店員さんが手に持つのは胸元が開いている大胆な服だった。


「いやあの、ルナは普段は魔法で胸元を隠しているのでそういう服はちょっと……。」

「ああ、そうだった!? ちょっと待ってて! 今度は大丈夫だから!」


再び奥に戻り、数分後に戻ってくる店員さん。

手に持っているのは一見普通に可愛らしいワンピースだった。

これなら大丈夫だろう、そう思いルナに試着してもらったんだが……。


「こ、これは……。」


ワンピースはゆったりめではなく、ルナの大きな胸がこれでもかと主張している。

はっきり言ってエロい。

魔法で隠すとすとーんとしていて可愛らしい。

店員さんグッジョブ!


「この調子でみんなの分もお願いします!」

「かしこまりましたーー!」


店員さんはイキイキとしながら服を選びみんなに手渡していく。

あれ?

なんか、蒼井とユキノのまで選んでいるんだけど……今更言っても遅いんだろうなぁ。

自分で払うと言ってくれるのを期待しつつ、諦めておこう。

たった2人だ。

そんなに高くないだろうし、気にするな、俺。


僕っ子のセフィアはそのスタイルの良さを存分に活かしたもの。

リリンはショートパンツで脚に視線が行ってしまう。

ルリエは活動的なイメージのあるポニテに合わせてスポーティな感じ。

シアはいわゆるカジュアルな感じなのだろう。

ところでカジュアルって何?

アカネはお嬢様っぽい服で本物のお嬢様であるアカネにはよく似合っていた。

レイダさんは普段が凛としてかっこいいが、今回のは一転して可愛らしいものとなっている。

蒼井とユキノはまあ、うん。

よく似合ってる。

嫁でも恋人でもない相手を褒めるのはどうかと思うし、そもそも俺に気の利いた褒め言葉は期待する方が間違っている。

少なくとも、ファッション系に関してちゃんと褒めれる自信はない!


「ありがとうございましたー!」


予想外の出費となってしまったが、かわいい嫁達が見れたので十分元は取れてる。


「この後どうする?」

「シルヴィアちゃんの方はいいの?」

「それなんだけどなぁ……俺としてはこのままダンジョン用の買い出しとかしておきたいんだけど。」

「それは僕達がやっておくからレントは気にしないで行ってきて。それに、レントのストレージにはもう十分過ぎるほど入っているでしょ?」

「確かにそうなんだけど……。」

「こっちはユウキちゃんとユキノちゃんのアイテムボックスとアイテムバッグに入れる物を買うだけだしレントがいなくても大丈夫だよ。」


大丈夫とかじゃなくて一緒がいいんだけど……ここまで言われたらなぁ。

しょうがない。

シルヴィアの方に行くか。


「分かった。一緒にみんなの武器もメンテしておくから渡してくれ。」

「あ、お願いね。」


そしてみんなと別れて1人寂しくグラハム武具店へ。

そういえば今は忙しい時期だけど使わせてくれるのだろうか?

そんな疑問はすぐに解消され、既に俺用になりかけている場所はちゃんと空いていた。

しかしそれは余裕があるというわけではなく……


「よく来てくれたな! 今回も頼むぜ!」

「いやいや! 俺1週間後に天装と一緒にダンジョンに潜るから無理ですって!」


バイトとして場所を空けていただけだった。


「それに、3日後に連携の訓練とかもありますから無理ですよ。」

「つまり明日明後日、そして4日後5日後は空いているわけだな?」

「え、そういう風に取れなくもないですけど……、まさか?」

「ならその4日間の間でいいから頼むわ。それに、幸い前ほど多くねぇし予想はしてたからよ、4日だけでも十分だ。」

「……はぁ。分かりました。普段使わせてもらってますし、やりますよ。」

「そうこなくっちゃな!」

「でもその前に、自分達の武器の方をやらせてもらいますよ。」

「分かった。」


バイトで作る装備の仕様書を受け取り、炉に火をくべる。

本当は間の4日はデートしたり、模擬戦したり、イチャイチャしたりと充実した時間にするつもりだったんだけどなぁ。

例の槍の件もあるし、また拗ねられたら敵わないからアルバ達の面倒を見ないといけないのに……バイトか。

人生ままならんもんだな。

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