第793話 1週間後にダンジョンアタック的なお話

「えと、ナタリアさんいるかな?」

「なんでまだ居るの? 来ないでって行ったよね? すぐに帰ってくれない?」


取りつく島もないとはこの事か……。


「ちょっとルーニャ? 何玄関で騒いでいるの? ……あら? お客さん?」

「えと、ナタリアさんを訪ねて来たんですけど、話聞いてくれなくて……。」

「こらルーニャ。前から言ってるよね? 相手が誰であろうときちんと話を聞きなさいって。」

「でも姉さん!」

「でもじゃありません! すみませんね。この子、男性嫌いでして、話しても聞かないんですよ。あ、申し遅れました。私、この子の姉でラーニャと申します。」

「あ、俺はレントです。」


物腰が丁寧な人だなぁ。

こんな人が姉なのに、なんで妹の方はああなんだろう……?


「あなたが……お噂はかねがね。ナタリアですよね? 今呼んできます。それとルーニャ? 後でお仕置きだから。逃げないでね?」

「ぴっ……!」


おや?

丁寧な人……なんだよね?

なんか、ルーニャとやらがマナーモード中の携帯電話並みに震えてるんですけど……。

ひょっとしてあれですか?

普段温厚な人ほど怒ると怖い的な?

まあ、あれだ。

怒らせなければ何も問題はないさ。

どうせそんなに関わらないだろうし、普通に接していれば何も問題はないはずさ。


「ようこそお越しくださいました。それで、用件はなんでしょう?」

「ああ、アデラードさんから許可が出たからね。その話をしに来たんだ。」

「なるほど。分かりましたわ。では、こちらへどうぞ。」

「え? 入っていいんですか?」

「構いませんよ。だって、仕事の話なのでしょう? ならば、せっかく訪ねて来たのに追い返すなど失礼ではありませんか。もっとも、あなた以外通すつもりはありませんけど。」

「それってどういう……?」

「友人の恋人ですからあまり無碍にするのも良くないという事です。嫌われたくありませんから。」

「えと、お邪魔します。」


なんかよく分かんないけど、どうやらアカネのお陰で俺は【天装の姫】のクランハウスに入れるようだ。

とはいえ、あくまでもこれは特例。

住人全員に認められたわけじゃないのであまりキョロキョロとするのはやめておこう。

男子禁制の女の花園だ。

気にはなるけど、そういうのはちゃんと許しを得てからだ。


「許可が出たという事でしたけど、それはどの程度で?」

「罠の解除のノウハウを持った人に現場で教わりながらはどうかって聞いて、それでいいって言われたんで、多分二十層くらいまでなら大丈夫だと思いますよ。」

「そう……二十一層からはまた様式が変わるからその辺は要相談って事かしらね。」

「そうなんですか?」

「ええ。しかし二十層ですか。となると人数はそんなに多くなくていいでしょう。むしろ多い方が大変ですし。こちらは6人程ですかね。挑むのは。」

「こっちはいつも通り全員のつもりです。」

「となると16人……許容範囲内ですわね。では次は日時についてですが、何か希望はありますか?」

「防具のメンテを頼む予定なので、それが終わったらいつでも。」


まあ、回避主体だからあんまり傷んでないけど、一応念の為ね。


「となると、1週間くらいかかりそうですわね。今は忙しいでしょうし。」

「でしょうね。」


きっと今頃は詰め掛けて来た冒険者達に作り笑顔で対応しているんだろうな。

何故作り笑顔かというと、本当の笑顔は俺の前で見せるからだ。

惚気です。


「では、1週間後と想定して準備を進めていきましょう。荷物等は各パーティで準備をして後で内容の確認をしましょう。探索期間はおよそ3週間。十階層までは往復で1週間ほど、二十層までは少し余裕を持って往復で2週間と考えましょう。なので食料は3週間分とその予備。そして、なんらかの要因でどちらかのパーティが食料を紛失した際を想定しての分を用意してください。」

「戦闘に関してはどうしますか? 必要最低限に抑えるのか、戦闘するならどちらがするのか、それとも協力するのか? ボス戦闘もどうしましょうか?」

「可能ならば協力してあたりましょう。後は状況を見て判断しましょう。その為に一度各自の出来る事、出来ない事を確認する機会を設けた方がいいでしょう。」

「後は連携の訓練ですね。一度合わせておけば後々楽になりますから。」

「ええ。ではそれは3日後にしましょう。」

「何故3日後か理由を聞いても?」

「ただ単に、真ん中だからですわ。」

「なるほど。」


そんな感じで3日後に連携の訓練。

1週間後にダンジョンアタックという事になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る